いちわん

~ 楽在一碗中 ~
お茶の本

茶を楽しむ男たち

憧れの従兄のような

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この本は、数寄者の樫崎氏とお茶に関わる人々(美術商、研究者、作家・・)との対談集です。

作者を始め皆さまお茶が好きで仕方がない様子が分かり、どなたも楽しくお茶の話をされています。

個人的に印象強いのは美術商の塚田晴可氏で、以前、この本にも登場されている村瀬治兵衛氏の月釜・二十日会でご一緒させていただきました。

その折にたまたま軸の作者は白隠禅師と当てたところ、大層ほめていただいたことをよく覚えています。

その後も銀座の塚田氏のギャラリーでいろいろ教えていただいて、お茶や美術の大先輩として、憧れの従兄のように尊敬していましたが、急逝されてしまい、今でも残念です。
 
 

書籍情報

タイトル
茶を楽しむ男たち
著者
樫崎櫻舟
出版社
里文出版
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四季の茶の湯 〈土用〉 ― 茶のある暮し

相手に合わせたおもてなし

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作者の山下恵光氏は、表千家の宗匠で光悦寺のご住職です。

この本は、以前お書きになった「四季の茶の湯 ― 茶のある暮し」の続編です。

山下氏はお茶に携わって長く、この本はその経験と知識に基づいて、お茶に関して広く深くお書きになっています。

どこから読んでも面白く、勉強になります。お勧め致します。

特に印象に残りましたのは、お茶席で言葉にしなくても、ここで総礼、ここで次客へ一礼、ここで亭主に一礼・・で進められますが、これが「たまたま同席した何も知らない人達には、その無言の一座が何とも窮屈な世界になってくる」という一文です。

私は言葉を使わず以心伝心することこそお茶・・と思っていましたが、言われてみれば独善的で、知らない方にはおもてなしになっていないと気がつきました。

もし気に入っていただけましたら、前編の四季の「茶の湯 ― 茶のある暮し」もお勧めします。

光悦寺は、お茶会がないときに訪れたことがあり、山に囲まれた静かなお寺でした。

お茶室が多くあり、光悦会ではさぞ多くの人が訪れ、お茶を楽しむのだろうなと想像しました。

 

書籍情報

タイトル
四季の茶の湯 〈土用〉 ― 茶のある暮し
著者
山下惠光
出版社
平凡社
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茶碗と茶室

茶碗と空間

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作者は千家十職の茶碗師、樂吉左衞門氏です。

樂氏は茶碗はそれだけ見てもわからない、ふさわしい場に置かれるべきものとお考えになって、さまざまな茶碗をいろいろな場所で拝見し、思索しています。

珠光青磁茶碗 と 大徳寺龍源院
大井戸茶碗「東方朔」 と 醍醐寺三宝院
長次郎黒樂茶碗「ムキ栗」 と 待庵
志野茶碗「老の友」 と 藪内燕庵
光悦赤樂茶碗「乙御前」 と 角屋

それに

樂氏作の焼貫黒樂茶碗「入渓」 と 樂氏設計の樂吉左衞門館盤陀庵

と進みます。

お茶碗はそれぞれの場に確かにぴたっと落ち着いて絵になります。

ただ乙御前は、島原の角屋よりもその後撮影した樂氏ご自宅の茶室の方が落ち着いて静かに喜んでいる気がしました。

樂氏の文章を読みますと、茶碗やお茶に対していかに深く思索なさっているのか分かり、感嘆してしまいます。

そのお考えを要約もできず、とても書ききれないので、お読みいただければと思います。

登場したお茶室のうち、佐川美術館の盤陀庵に入ったことがあります。水の底にコンクリート造りではありますが、不思議なことに確かお茶室でした。
 
 

書籍情報

タイトル
茶碗と茶室: 茶の湯に未来はあるか (とんぼの本)
著者
樂吉左衞門,木村宗慎,川瀬敏郎
出版社
新潮社
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畠山即翁の茶事風流 懐石と懐石道具

綺麗な器と美味しい料理

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お茶道具は、茶入・棗・茶杓・茶碗といった点前道具に加えて、懐石で使う懐石道具も好きです。

四つ碗、折敷、向付に始まり、燗鍋・盃、煮物碗、焼物の器、進肴の器、小吸物椀、八寸、香の物の器、菓子器・・とあり、それぞれがバラエティに富んでいて見ていて飽きないです。

特に向付は種類が多く、以前五島美術館で向付を集めた展覧会を拝見したことがあります。

畠山即翁が茶事・茶会が好きで、茶会記には、自会記二百余回、他会記三百回に及び、とりわけ懐石への執心ぶりは格別とのことで、そのため懐石道具が多く畠山記念館に集められています。

畠山記念館の茶道具展でも、懐石道具が展示されます。

この本は、畠山即翁が行った茶事・茶会を再現したもので、懐石道具だけでなく料理も器に盛られ、カラー写真を見ますと思わず「美味しそう」とつぶやいてしまいます。
 
 

書籍情報

タイトル
畠山即翁の茶事風流―懐石と懐石道具
著者
畠山記念館
出版社
淡交社
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茶席の会話と手紙

盛りだくさんな内容

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お茶事に招かれましたら、前礼ということで事前に亭主に手紙を書き、お茶事が終わりましたら後礼の手紙を亭主に送ります。

またお茶事では、待合では客同士、茶室では亭主や客同士で会話をします。

手紙や会話は決まった文句をという訳ではないですが、パターンを知っていますとスムーズに進みます。

特に会話は茶事の流れの中でタイミング良く行うので、茶事に慣れない間は、事前に考えておいていた方がよいと思います。

この本の特長は、お茶の手紙の書き方や茶事の流れに沿った会話に加えて、道具についての言葉のヒントが書かれており、実際に役立ち、勉強になります。

各季節は、口切、初釜、花見、初風炉、初夏、名残で、それぞれ取り合わせの道具について、例えば次のような言葉のヒントが書かれています。

口切の掛物 ・・ お床のお掛物はまことに重々しく意味深いものと存じますが
初釜の薄茶器 ・・ お棚と見どころを引きたてあう、美しい色合の薄茶器でございますね
初夏の風炉 ・・ 藤灰の景色も涼しげでおきれいですね
・・というようにです。

もちろん茶席の会話はその時の状況や道具によって臨機応変に楽しむものですが、定番を知っておくことによって応用がしやすくなります。

全ページカラー写真が綺麗で、各道具の説明、道具のしまい方、用語集まであり、盛りだくさんな内容です。

 

書籍情報

タイトル
お茶のお稽古 茶席の会話と手紙―所作ごとの会話のポイントがわかる
著者
小澤宗誠
出版社
成美堂出版
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茶道具に見る日本の文様と意匠

お茶の文様・デザイン

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お茶道具では、文様のない無地のものや、丸や四角といった単純な形のものがあります。

それとは別に、さまざまな文様が描かれた道具やさまざまな形をした道具があります。

この本は、動物、植物、景色と風物、天体、吉祥・・というように文様を分類分けしまして、その文様を説明し、実際にその文様を使った道具の写真が掲載されています。

文様は動物、植物といった見てわかる文様と、宝尽くしや松皮菱というようによく見かけるのですが内容は知らない文様があり、後者には詳しい解説がありまして、カラー写真と見比べながら楽しく勉強できます。

文様を知っていますと、お茶会で話が弾みますし、お茶会の道具を覚えやすくなります。

 

書籍情報

タイトル
茶道具に見る 日本の文様と意匠
著者
森川春乃
出版社
淡交社
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茶道具の取合せ

取合せを勉強するならまずこの一冊

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お茶は幸か不幸か道具を使ってお茶を点て、お茶をいただきます。

もちろんお茶とお湯と茶筅があれば、茶器や茶杓や茶碗がなくても、何らかの器でお茶を点てることができます。

ただそれではだんだん物足りなくなり、お道具を揃え始めると・・

道具の取合せ(組み合わせ)を考え始めます。

その時に、この本に書かれています、取合せの基本的な考え方やテーマ毎の取り合わせが勉強になります。

基本的な考え方は、例えば濃茶向けの道具、薄茶向けの道具、主茶碗と替茶碗の取合せ等で、これはなかなか他の本では書かれていないと思います。

取り上げられたテーマは、口切り、初風炉、名残、節分等々で、こちらは日本中の名品を取合せていて、実現はできませんが、楽しく勉強できます。

取合せは、道具の色や形や材質といった感覚的なことも重要ですが、この本にあるような取合せの考え方や(ちょっとオーバーですが)理論も勉強することも大切だと思います。
 
 

書籍情報

タイトル
茶道具の取合せ (お茶人の友)
出版社
世界文化社
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楽茶碗

長次郎と光悦

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千家で一番身近なお茶碗である樂茶碗の本を紹介致します。

筆者は、この方しかいないという樂家十五代当主樂吉左衞門氏です。

樂家初代長次郎から始まり、二代常慶、三代道入と続き、ご当代までのお茶碗、脇窯として玉水焼と大樋焼、それと光悦のお茶碗が解説されています。

樂茶碗は好きで、特に長次郎とご当代、それに光悦のお茶碗に惹かれます。

濃茶は長次郎かご当代のお茶碗、薄茶は光悦のお茶碗が理想です。

以前東京国立博物館で、長次郎と光悦のお茶碗が並んでいて、どちらを選ぶかと一人で勝手に悩んで、「毎日お茶をいただくならば光悦の乙御前」と結論を出しました。

乙御前は本当にキュートで素敵です。

 

書籍情報

タイトル
楽茶碗 (茶道具の世界)
著者
樂吉左衞門
出版社
淡交社
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茶箱遊び: 匣 筥 匳(はこ ハコ HAKO)

再び茶箱

茶箱遊び

再び茶箱の本です。(これまでの茶箱に関する記事「持ち運ぶ楽しみ」「流派の茶箱」)

茶箱・茶籠が好きなもので、つい紹介したくなってしまいます。

この本は、京都の「うるわし屋」さんというアンティーク漆器店のご主人が書かれたものです。

抹茶と煎茶の三十三組の茶箱・茶籠の道具組の写真集です。

漆塗りの茶器やお茶碗などの漆塗りの道具だけでなく、もちろん焼物や竹や金属の道具もあります。

宗匠の箱書付きといったお道具はほとんどないものの、センス良く選ばれていて、身近な時代物や現代物の道具で見ているだけで楽しくなります。

 

書籍情報

タイトル
茶箱遊び: 匣 筥 匳(はこ ハコ HAKO)
著者
堀内明美
出版社
淡交社
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堀内宗心茶事 風炉編

侘び茶の茶事を拝見

堀内宗心茶事 風炉編 堀内宗心監修 世界文化社刊

監修者の堀内宗心宗匠は、久田家とともに表千家を支える茶家である堀内長生庵前庵主で、流派を越えて、茶道界における侘び茶の第一人者であると言えます。

この本は、堀内宗匠が亭主となって催した茶事を書籍とDVDで記録したもので、堀内宗匠の茶事をゆっくりと拝見することができます。

茶事は、待合に始まり、腰掛待合、席入、亭主挨拶、初炭、主菓子と進み、中立後、濃茶、懐石、後炭、薄茶と一部始終が収録されています。

今回は残暑の中、濃茶を午前中に済ませ、その後昼の食事となる懐石をいただたく、といった前茶形式の茶事で、正式な正午の茶事とは異なる趣向です。

亭主によっては、華やかな道具や現代アートの道具を使う場合もありますが、堀内宗匠は、「これぞ千家の侘び茶」の道具組で行いました。

ここでは、茶事の順番やお客の振る舞いを追うのではなく、ぜひ茶事そのもの、侘び茶のこころを感じていただければと思います。

また茶道具好きの方には、美術館や茶道具店で眠っているのではなく、茶事に使われて生き生きとした道具の数々を堪能できます。

心に残りました道具は、

残暑ということで爽やかさを演出する
  銘も涼しげな 高取ヘラ目耳付茶入 銘「谷川」
  蓮の葉を伏せた形の 荷葉釜海老鐶付
  白木の 桐木地小四方棚

侘びた趣の
  瀬戸渋紙手一重口水指
  濃茶には 蕎麦茶碗
  薄茶には 了入作黒平茶碗 銘「石清水」

お客様に因んだ
  覚々斎作茶杓 銘「松」

これらが実際に運び出され、お茶を点てているのを拝見していますと、わくわくします。

それと堀内宗匠の優しい所作や穏やかなお話も見どころです。

余談になりますが、茶事において亭主が、初座は十徳、後座は濃茶で格を上げて紋付と袴というように着替える場合があります。

堀内宗匠は十徳のまま、初座はグレーで後座は明るいベージュと着替えられて、なかなかお洒落だなと思いました。
 
 

書籍情報

タイトル
堀内宗心茶事 風炉編
著者
堀内宗心(監修)
出版社
世界文化社
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