いちわん

~ 楽在一碗中 ~
「卯花墻」と桃山の名陶展

「卯花墻」と桃山の名陶展

桃山の陶器総覧

「卯花墻」と桃山の名陶 チラシ
三井記念美術館にて、「「卯花墻」と桃山の名陶」を拝見して参りました。

今回は、志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部といった桃山時代を代表する茶陶の展覧会で、これを拝見しますと、樂以外の桃山時代の陶器をざっと眺めることができます。樂焼は、次回展覧会「楽茶碗と新春の「松雪図」」までのお楽しみです。

注目は、先日の「不二山」(※)に続く国焼茶碗もう一つの国宝、志野茶碗 銘「卯花墻」です。こちらは不二山のようなどっしりとした品格ではなく、何とも言えない絶妙な「お茶」を感じます。

「お茶がある」という言葉を茶碗で表現しましたら、一つの形として卯花墻になると思います。

前回の井戸茶碗(※)のように、手にしてお茶をいただきたいと強く思いました。

それともう一つぜひ拝見したかった志野茶碗は「広沢」(湯木美術館蔵)です。

白にオレンジ色の焼き肌がとても綺麗で、見事な焼き具合です。間近で拝見すると意外とたっぷりしていることに気がつきました。

以下、展示分けに従いまして、気に留まりました作品を挙げます。

志野
志野は、先ほど挙げた卯花墻と広沢を代表とするお茶碗に加えて、香合と懐石道具も素敵でした。特に向付は志野草文向付、鼠志野花文向付とさまざまな模様の向付があり、お茶事で刺身を盛って折敷に四つ碗とともに置いた姿を想像していました。

黄瀬戸
水指、茶碗、香合があり、惹かれましたのは懐石道具の鉢で、黄瀬戸福字平鉢、黄瀬戸菊花形鉢等がよかったです。進肴が似合いそうです。

瀬戸黒
これはもう、迫力のお茶碗ということで、瀬戸黒茶碗 銘「大原女」が大きな存在感で展示されていました。お茶の緑が映えそうです。ただお茶を点てるには圧倒されてプレッシャーがかかる気がします。

織部
織部は、日本一の織部茶碗と聞いたことがある、織部菊文茶碗が素敵でした。黒の釉薬の掛分けと菊文のバランスが見事です。
それと一度は手にしてみたい織部切落手鉢がよかったです。手付きの手鉢で焼魚を盛って、茶事で使ってみたいです。

それから今回の展覧会を象徴するような、寄向付(よせむこう)が展示されていました。

通常向付は同じ種類ですが、これは次の五種類の向付を組み合わせたもので、しかもそれぞれが一級品という贅沢な向付です。

寄向付
志野飛鳥文向付
鼠志野飛鳥文向付
織部花筏文向付
黄瀬戸鉢
青楽割山椒向付 道入作

茶事の席中では、お客様同士が向付を交換して拝見しあうのが楽しみのひとつだとか。

それにしても、慶長年間(1596-1614)初頭から元和年間(1615-1623)頃のわずか20~30年の間に、これほどバラエティに富んだ焼物、しかも茶陶が生まれたことは奇跡的だと思います。

 

●特別展 国宝「卯花墻」と桃山の名陶 -志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部-
三井記念美術館(東京都中央区) 2013年9月10日~11月24日
http://www.mitsui-museum.jp/index.html

三井記念美術館

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