いちわん

~ 楽在一碗中 ~
いちわん in 小田原 ~ 大茶人ゆかりの展示館

いちわん in 小田原 ~ 大茶人ゆかりの展示館

大茶人ゆかりの展示館

小田原にあります、近代の大茶人である益田孝(鈍翁)(1848-1938)と松永安左エ門(耳庵)(1875-1971)ゆかりの展示館に行って参りました。

 

◆鈍翁 in 西海子

鈍翁 in 西海子

鈍翁 in 西海子(どんのう いん さいかち)

鈍翁は、三井の大番頭として三井物産や日本経済新聞、三井鉱山等を興して三井の発展に寄与しました。

美術品の蒐集家でも知られ、源氏物語絵巻、紫式部日記絵巻、佐竹本三十六歌仙、十一面観音像といった現在国宝や重要文化財に指定されている作品を数々所蔵し、日本美術の海外流出阻止も行いました。

生前、コレクションで美術館を作ることも考えたようですが、相続と戦後のGHQによる高率の財産税により子孫の手を離れ、美術品の数々は畠山記念館、五島美術館、根津美術館等に収められています。

また茶人としても千利休以来の大茶人と云われ、茶事・茶会を数多く催し、原三溪、松永耳庵といった財界人をお茶に導きました。

鈍翁in西海子(さいかち)の館長の奥様の祖父母が鈍翁に仕え、祖父は執事として祖母は茶懐石の料理人として働き、その縁で鈍翁の広大な屋敷のあった掃雲臺の近くで、この展示館を平成13年に開館しました。

展示品は、祖父母が直接鈍翁から受領したものを始め、館長が蒐集しました、鈍翁ゆかりの掛軸、色紙、短冊、茶道具、書簡、写真等でなかなか他では拝見できないものが多いです。その努力に頭が下がります。

館長の鈍翁に対する思いは強く、情熱のこもった解説をしてくださり、その後、館内の茶室でお薄を一服いただきました。

◆松永耳庵記念館

松永耳庵記念館

松永耳庵記念館 老欅荘(ろうきょそう)

松永耳庵は、東邦電力を始め各地の電力会社を傘下に治め「電力王」と称されました。

戦後は電力事業再編にあたり、周囲の反対を押し切って進め、「電力の鬼」と非難を浴びましたが、安定した電力供給により日本の復興をもたらしました。

60歳を過ぎてから益田鈍翁に引き込まれてお茶の道に入り、有楽茶碗を破格の値で入手するなど短期間で頭角を現し、鈍翁・原三溪とともに近代三茶人に数えられました。

蒐集した茶道具を始めとする美術品は1948年に東博に寄付し、その後コレクションを再開して、1961年の国宝「釈迦金棺出現図」で完成しました。

コレクションは保存と一般公開のため、松永記念館を設立しました。

ところが耳庵没後に資金難・人手不足となり作品のほとんどを福岡市美術館に寄贈し、解散しました。

現在の松永記念館は、耳庵ゆかりの品はほとんどなく、隠居後に暮らした「老欅荘」が見学できます。

老欅荘は丘の上に建ち、周りに遮るものがなく、日当たりも風通しも良い家で、昔は小田原の海が見えたそうです。

館員に説明されて初めて気がつきましたが、広間の十畳は、畳の大きさがまちまちで、やかんでお茶を点てている耳庵の自由なお茶を思い出しました。

見学したお茶室は四畳半台目で、窓も躙り口も大きく、明るいお茶室でした。ここも風通しが良く、きっと耳庵はゆったりとお茶を楽しんだことでしょう。

耳庵の茶道具は、東博か福岡に行かなければ拝見できませんが、老欅荘で耳庵のお茶ぶりを感じることができます。

小田原には、鈍翁・耳庵と並ぶ、三越の社長を務めた茶人の野崎廣太(幻庵)(1859-1941)の別荘もあり、意外な茶どころということが分かりました。

 

●展覧会情報

春の鈍翁展
鈍翁in西海子(神奈川県小田原市)
2015年1月15日~2015年4月29日
http://www.post-ad.co.jp/donnou/

常設展
松永記念館(神奈川県小田原市)
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/facilities/matsunaga/

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