いちわん

~ 楽在一碗中 ~
涼づくし(畠山記念館)

涼づくし(畠山記念館)

夏の取り合せを学ぶ

畠山記念館

畠山記念館にて、「平成27年夏季展 涼づくし」展を拝見して参りました。
畠山記念館らしく懐石も含めた、夏の取合せを味わい、そして勉強することができました。

主な作品を説明します。

【濃茶の取合せ】
備前茶入「午枕」(ひるまくら)は、肩衝でごろっとしたお茶入で、午寝の枕という銘に納得できます。
粉引茶碗「放れ駒」は、大ぶりで平茶碗に近い形です。
金で継いでありまして、人を乗せずに走り回って、ぶつかって欠けてしまったのではと想像します。

小堀遠州作の茶杓「海士小舟」(あまのおぶね)と鎌倉彫芦葉達磨香合がペアで展示されていました。
なぜかと思ったところ、芦葉には達磨大師がインドから中国へ赴く際に、一片の芦の葉に乗って水上を渡ったという伝説があり、達磨大師を海士の小舟で迎えに行った景色が思い浮かびます。

【薄茶の取合せ】
すっきりとした阿蘭陀白水指と絵瀬戸割高台筒茶碗 元贇に惹かれました。
元贇焼は、中国明代末期の人、陳元贇が尾張名古屋で作成した陶器で、瀬戸の土を取り寄せ、呉須を使って安南写しを試みたもので、なかなか拝見できない珍しいお茶碗だと思います。
「筒茶碗」と聞きますと、冬向けと思ってしまいますが、このお茶碗は青味がかった白い釉薬がかかり、茶碗の腰あたりに水色の釉薬で魚の絵が描かれており、涼しげです。

懐石道具では、青磁一閑人酒呑がユーモラスでした。
一閑人というと井戸を覗き混んでいる姿を思い浮かべますが、これはお酒に酔って立ち上がって踊っているような楽しいポーズでした。

軸は、狩野常信作の滝図が、滝の周りを薄墨で描き、水しぶきが涼しげです。
また刺繍で滝を描いた「滝文様刺繍裂」も展示されており、華やかでした。
一行書では、大徳寺185世住持である玉舟宗璠筆の「檻前山青水緑」が掛けられており、これは「窓から外を見ると、山は青く水は緑なり」という自然で当たり前の風景をたとえにし、当たり前のことを当たり前に行じることが非常に大事という教えを説いています。

また今回は特別展示として、染付牡丹唐草耳付壺、染付唐草文水注、染付唐草文大皿が拝見できました。
祥瑞と違い、藍色がにじんだ様子が素朴な印象を受けました。

夏季展 涼づくし(畠山記念館)

●展覧会情報

夏季展 涼づくし
畠山記念館(東京都港区)
2015年8月1日~2015年9月13日
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/index.html




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