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村上隆のスーパーフラット・コレクション -蕭白、魯山人からキーファーまで-(横浜美術館)

村上隆のスーパーフラット・コレクション -蕭白、魯山人からキーファーまで-(横浜美術館)

数寄者としての現代アーティスト

村上隆のスーパーフラット・コレクション

横浜美術館にて、「村上隆のスーパーフラット・コレクション -蕭白、魯山人からキーファーまで-」を拝見して参りました。
パンフレットを見ますと、現代アートが中心でお茶関連はほとんどないのではと思ってお伺いしたところ、良い意味で期待を大きく裏切られました。

入口にはまず戦闘機の胴体のようなキーファーの巨大な作品があり、見上げると巨大な縫いぐるみが展示され、個人のコレクションの常識を覆されるような驚きでした。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

最初は「日本・用・美」と名付けられた古美術品の展示室です。解説には「村上氏のコレクションの中でも、質量において群を抜いているが、陶磁器の作品群です」、「日本美術の奇想の系譜に位置づけられる曾我蕭白(1730-1781年)や白隠埜鶴(1686-1769年)ら江戸中期の絵画や~日本日の淵源、日本人の美意識に向けられた村上隆の眼差しをたどります」とあり、お茶関連もあるのではと思わせます。

入口には「陶製瀬戸狛犬 北大路魯山人旧蔵」があり、入るとすぐに蕭白の「定家・寂蓮・西行図屏風」と白隠禅師の「いつみても達磨」が展示されています。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

屏風は、定家と寂蓮が西行の旅立ちを眺めている図で、二人とも「旅とはご苦労様だな・・」というような表情をしており、まるで水墨が描いた漫画のようです。白隠の軸は、達磨図と「いつみても」という讃で、まるでポップアートのようです。

次は陶磁器で、縄文、弥生、素焼と年代順に並んでおり、茶陶の桃山まで続きます。桃山では次の茶碗が展示されていました。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

・鼠志野茶碗 銘さざ波・・杉綾のような白土の模様がありました
・呼継ぎ 志野茶碗
・瀬戸黒茶碗
・黒織部茶碗・・白い注連縄のような文様です
・熊川茶碗 銘花雫・・綺麗な枇杷色です

焼きものの中で、素朴な平安時代後期の「木造女神像」に惹かれました。近・現代では、ヨーロッパのスリップウェアが並び、北大路人魯山人(1883-1959年)の次のような作品が続きます。

・志野茶碗・・紅色に白い檜垣文様が美しいです
・備前徳利
・志野さけのみ・・これも紅色が美しいぐい呑みです
・織部四方鉢・・パンフレットに掲載されていました
・染付け鯰向付
・日月椀・・焼きものだけでなく塗りものもあります

この後、荒川豊蔵の志野茶碗、川喜田半泥子の志野茶碗と続き、圧巻なのは仙がいのユーモラスな画賛、一休和尚「初祖菩提磨大師達」、白隠の三幅対といった茶掛となりそうな軸がずらりと並んでいました。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

次の展示室は「村上隆の脳内宇宙」というタイトルで、床から吹き抜けの高い天井までびっしりコレクションが積みあがっています。手前にはシーサー、その向こうには人間大の作品、壁には陶磁器の小品が棚に入って並び、天井にはモビールがゆらゆらしていました。確かに人の頭の中は、このように混沌としているのではと思わせる部屋でした。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

他の展示室では、ヘンリー・ダーガーといった現代絵画、天才アラーキーの写真、立体アートは日本の奈良美智、中国の真珠工場?を題材とした映像アートと多士済々な作品群で、共通点が見いだせないくらいバリエーション豊かです。

村上隆のスーパーフラット・コレクション

解説では村上氏は、「「芸術とは何か?」という疑問に対して、あまりにも愚直に付き合ってきた結果、あれもこれも手を出してきた」「体験、経験しないと理解できない~そういう生き方を必然的にしてしまった」とあります。それを実現してしまう、村上氏の情熱・執念は凄いものだと感心しました。

お茶の視点で見ますと、コレクションの茶道具と現代アートを取り合わせて、お茶事をしてみたら・・と想像しただけでわくわくします。数寄者の村上氏の誕生を心待ちにして、会場を後にしました。

●展覧会情報

村上隆のスーパーフラット・コレクション -蕭白、魯山人からキーファーまで-
横浜美術館(神奈川県横浜市)
2016年1月30日~2016年4月3日
http://yokohama.art.museum/index.html

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