いちわん

~ 楽在一碗中 ~
樂歴代 長次郎と14人の吉左衞門 (樂美術館)

樂歴代 長次郎と14人の吉左衞門 (樂美術館)

次の、15人目の吉左衞門へ

樂歴代 長次郎と14人の吉左衞門 (樂美術館)

樂美術館にて、「樂歴代 長次郎と14人の吉左衞門」展を拝見して参りました。

樂家では長次郎の次の常慶から代々「吉左衞門」を名乗り、当代が14人目にあたります。吉左衞門はそれぞれの時代を生き、決して踏襲することなく、それぞれが己の世界を築き上げてきました。今回は、代々の特徴が色濃く表れている作品が展示されていると感じました。

一階の正面に、意外にも茶碗ではなく、黒樂茶碗を焼くための内窯が展示されていました。黒樂茶碗は窯の内側にある内窯に一碗入れて蓋をし、周りに炭を詰めてフイゴでを風を送り温度を上げて焼き上げます。

一碗焼くと取り出して次の一碗を内窯に入れて焼きます。「その瞬間その瞬間たった一碗のためだけに炎を燃やすという独特な焼き方」です。

一階は樂歴代が並んでいました。今回の最後は樂篤人氏の黒樂茶碗で、出品目録には「惣吉・次期十六代」とあり、世代交代の準備は進んでいると実感しました。

歴代の作品は、次のように作者の特徴が際立ったものでした。

・のんこう黒樂「残雪」・・蛇蝎釉
・一入黒樂「暁天」・・朱薬
・宗入赤樂・・明るい釉調
・了入白樂筒・・篦目が強く白樂
・吉左衞門赤樂「月波」・・ざっくざっくと篦で切り落としたような造形

二階は樂歴代の茶碗以外のさまざまな作品が展示されていました。主な作品は次のとおりです。この他にも香炉や懐石道具等がありました。

・茶入・・一入の茶入を初めて拝見しました。黒樂瓢形茶入「鼓滝」で雫が滴るような釉薬です
・利休座像・・旦入の座像で樂家の仏壇に置いてあるもので、見事な造形です
・花入・・左入の香炉釉立鼓花入がシャープなフォルムでした。
・水指・・覚入の焼貫烏帽子形四方水指で、美術館のお茶会でも拝見したことがあります。最初に見たときは、焼貫なのでご当代が作られたのではと思いました。

三階は次の樂茶碗が並んでいました。いずれも名品と言えます。
特に亀毛の腰の張ったなんともいえないプロポーションは、形は異なりますが、光悦の「乙御前」を思い出して、手にしてみたくなります。

・長次郎黒樂「面影」
・常慶黒樂「黒木」
・のんこう赤樂筒「山人」
・宗入黒樂「亀毛」
・吉左衞門焼貫黒「女媧」

今回は、樂ご当代が跡を継ぐ篤人氏に、樂歴代の特徴、樂のさまざまな作品、樂茶碗の名品を示し、ここから何かを感じ取ってほしいのではと想像できる展覧会でした。

千家十職のイベントで何年か一度、「十備会」という展覧会があり、職方が新しい作品を展示します。三年ぶりの今回(2016年)は、三家(黒田家、土田家、吉村家)で代替わりがあり、もしかしたら樂家もその時期が近づいてきたのかも知れません。

●展覧会情報

樂歴代 長次郎と14人の吉左衞門
樂美術館(京都市上京区)
2016年3月12日~2016年6月26日
http://www.raku-yaki.or.jp/museum/

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