いちわん

~ 楽在一碗中 ~
茶碗の中の宇宙(東京国立近代美術館)

茶碗の中の宇宙(東京国立近代美術館)

樂茶碗の今まで、そして未来へ

東京国立近代美術館にて開催されている「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」を拝見して参りました。

近代美術館で何故お茶の展覧会をと思いましたが、樂家十五代の樂吉左衞門氏の作品が近代美術として高く評価されたのではと思います。

今回の展覧会は、樂家歴代の作品、特に初代長次郎と本阿弥光悦、それに樂ご当代の作品を一堂に拝見できることが特徴です。樂ご当代は「これほどの規模の樂の展覧会は暫く行われないだろう」と語っています。

会場に入りますと、二彩獅子に始まる長次郎のゾーンです。

(個人的に)長次郎の赤茶碗と黒茶碗のNo1と思っています、「大黒」と「無一物」を拝見でき、改めてこの二碗は素晴らしいと納得致しました。

さらにこの二碗に続く、黒「万代屋黒」、拝見する機会が少ない黒「禿」、赤「一文字」、長次郎の手の跡がわかる赤「白鷺」、筒茶碗の名品である黒「杵ヲレ」も並び、初めての機会に感激しました。

のんこうは名品、黒「青山」と赤「鵺」を拝見しました。

続いては光悦のゾーンです。黒の「村雲」と「雨雲」、飴釉の「紙屋」、それに何といっても赤「乙御前」を拝見することができました。「乙御前」は何回拝見しても素敵です。

長次郎の静謐さと厳しさにも、光悦の自由闊達さにも憧れます。

濃茶は大黒、薄茶は乙御前で・・いやいや濃茶を乙御前の方が洒落ているのでは・・と想像が膨らみます。

歴代の作品を拝見しつつ、樂美術館で拝見したことを思い出しました。

それらの中で惹かれるのは、一入の「山里」と宗入の「亀毛」です。「山里」は黒樂茶碗には珍しく素朴な絵が描かれています。「亀毛」はそのなまめかしいような何とも言えないほにゃとしたフォルムが素敵です。
どちらも樂美術館のお茶会で手にしたことがあり、特に「亀毛」はずっと手にしていたいお茶碗でした。

そしてご当代の十五代、十六代の幾つかの茶碗に続いて、ご当代のゾーンに入ります。

初めて拝見したご当代のお茶碗は「砕動風鬼」で、京都のCMで知って樂美術館で対面しました。その時に「吹馬」も拝見して、その斬新さ見事さに感激したことを覚えています。

樂美術館で月の火窓に魅了された「女媧」と見目麗しい「梨花」。佐川美術館の樂吉左衞門館で拝見した「舟中夜起」とフランスで焼き締めた花入。これはご当代が板で叩いて作ったと楽しそうにお話ししていました。智美術館にての久しぶりの個展で拝見した「一犂雨」。他の十職の方もさまざまな作品を出品していた大阪の民族博物館で拝見したAfricanDream「大地の朝」。これからも歩みを止めないと宣言するかのような巌のような新しいお茶碗。他にも岡山や茨城、名古屋の美術館にもお伺いしたと、それぞれのご当代の作品と出会った頃を思い出しました。

近年中に、おそらく代替わりが行われ、篤人氏が樂家十六代になることでしょう。その時に十六代がそして十五代がどのような作品を作られるのか興味は尽きません。





●展覧会情報

茶碗の中の宇宙
東京国立近代美術館(東京都千代田区)
2017年3月14日~2017年5月21日
http://www.momat.go.jp/

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