いちわん

~ 楽在一碗中 ~
父、小堀宗慶の背中

父、小堀宗慶の背中

家元が受け継ぐもの

父、小堀宗慶の背中

遠州流家元の小堀宗実氏(昭和31(1956)-)が家元になるまでの修行の様子や、前家元の宗慶宗匠(大正12(1923)-平成23(2011))からのさまざまな教えが書かれています。

宗実氏が宗慶宗匠から言われた「家元はなんでも出来ないといけない」という言葉が印象に残りました。

流祖の小堀遠州(1579-1647)は、「日本のレオナルド・ダビンチ」と呼ばれることもあるほどの、茶道具の目利きを始め、書、歌、作庭・・とオールマイティな武家茶人でした。

また宗慶宗匠も、書、歌、日本画、茶花、裂地、お香、茶道具の目利きや見立てと各分野において一流で「現代の遠州」と呼ばれることもある大茶人でした。

この宗慶宗匠の後継ということで、さぞや宗実氏は大きなプレッシャーが掛かったことと思いますが、お茶や書にしても「ひたすら練習する」「ひたすら稽古する」ことで前に進んできたということで、真面目で誠実な人柄を感じました。

それと宗慶宗匠は、宗実氏に、ある日ぽんと茶会の相伴(半東)役や稽古場の花を入れるといった新しい役を任せることで、成長を促していたようです。

家元を譲るということもある日突然言い渡したということで、見方を変えれば、先輩が後輩を、上司が部下を育てる場合にもあてはまるのではと思いました。

後半は宗慶宗匠とのお茶にまつわる話です。宗実氏が求めたお茶碗やお銚子といった茶道具を宗慶宗匠が先に茶会で使ってしまうとか、年初に削る御題に因んだ茶杓についての宗慶宗匠とのやりとり等を面白く読むことができました。

宗慶宗匠や宗実家元をご存じの方はもちろん、どのように家元になるのかご興味のある方にお勧め致します。またお茶だけでなくどのように家業や仕事を引き継ぐのか一つの事例を知りたい方にもお勧めです。

 

書籍情報

タイトル
父、小堀宗慶の背中
著者
小堀宗実
出版社
角川マガジンズ
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