Tea-activistとして
お茶の伝統の中にひそむ「気配の美」を求めて、著者の千種氏が世界各地で開催している実験的なお茶会の記録です。
千種氏は、「茶道家」、「茶人」、「数寄者」とも違い、お茶を媒体として世界を巡ってさまざな活動を行う、「お茶の活動家・・Tea-activist」との呼び方がふさわしいです。
そのお茶会は、次のとおりで、もう半歩踏み出すと、お茶から逸脱してしまいそうです。
それを「お茶」に踏み止めているのは、「ここでこそ、本物の『茶の力』を見せなくてはならない」と本文にあるように、千種氏のお茶に対する強い信念だと思います。
・ニューヨークでの温泉茶会
温泉の様子を写したアメリカの写真家の個展でのお茶会
・五島美術館での墨林茶会
和漢朗詠集の軸の元で平安時代の衣装を付けて漢詩と和歌を朗々と詠う茶会
・東京日仏学院でのワフリカ茶会
日本の「和」文化とア「フリカ」文化をと融合したお茶会
・セゾン現代美術館での遭遇の茶会
現代美術と茶釜を並べ、釜を宙に浮かせたお茶会
・ローマでの3.11義援金募集茶会
東日本大震災から10日ほどで開催した3.11義捐金茶会
どのお茶会もお茶とさまざまな文化の融合を試みており、どのような空間であったか興味津々で、参加してみたくなります。
巻末には、千家十職の大西清右衛門氏が千種氏のために作成した、「皐釜」を囲んで、千種氏、大西氏、画家の黒田アキ氏、哲学者の小林康夫氏との座談会が収録されており、茶会のエピソードや参加者の思いが楽そうに披露されています。
最後に千種氏が、
「現代アートの作品も何百年前の釜や茶碗が茶会という場で出会うと、まるでオーケストラのように個別の「物」を超えた何かがゆらゆらと立ち上がってくる。するとそこに、「気配」が立ち籠めるんです。その非常の気配のなかで束の間、遊びたいんですね。解き放たれて、みなさんとその時間をともにしながらで・・」
と述べており、その「気配」こそお茶の本質の一つではないかという気がします。
書籍情報
- タイトル
- 気配、その美
- 著者
- 千種さつき
- 出版社
- 水声社
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