南禅寺の畔の名品の数々
野村美術館の開館30周年記念名品展Ⅰを拝見してきました。
野村美術館は、野村証券、旧大和銀行、旧東京生命等の創立者である野村得七氏(号得庵)(明治11(1978)~昭和20(1945))が蒐集した美術工芸品の数々を展示する美術館で、京都南禅寺の近くにあります。
今年開館30周年にあたり、記念名品展を春と秋に開催する予定で、今回はそのⅠです。
美術館に入ると、まず得庵氏の能「安宅」の像があり、お茶に加えて能への造詣の深さも窺い知ることができます。
今回ぜひ拝見したかったのは、佐竹本三十六歌仙「紀友則」と上杉瓢箪茶入でした。
佐竹本三十六歌仙は、秋田藩主佐竹家に伝わった一巻の絵巻物(歌仙の肖像画と歌)でして、明治になって手放す折りにあまりの価値の高さに数寄者益田鈍翁氏と日本美術研究家田中親美氏が大正8年(1919年)が分割して、当時の数寄者と美術商がくじ引きで引き取り、それぞれ表装して軸にしたものです。
野村美術館にありますのは、紀友則の軸で、人物の細かな表情が分かるほど状態がよかったです。歌は「夕されば ほのかわらのかわきりに ともまよわせる千鳥なくなり」でした。三十六歌仙の軸は、さまざまな所有者に流転していますが、野村美術館の「紀友則」は分割時と同じ所有者である数少ないものです。
次の上杉瓢箪茶入は端正な形をしており、茶色の地にむらむらと黒い釉景が見事です。さすが天下ニ六ツノ内の六瓢箪の筆頭です。上杉景勝や紀州徳川家等を経て得庵氏まで伝わりました。
他にも名品揃いで、特に素晴らしいと思いましたのは三島茶碗の土井三島と樂家三代のんこうこと道入の赤茶碗「若山」です。
土井三島は三作三島といいまして、お茶碗の内側の見込に三島、内面と外面に粉引、底の高台に刷毛目と三つの要素がそろっている珍しい茶碗です。全体的にとろりとした印象です。
のんこうの「若山」はノンコウ七種の一つに数えられるほど有名なお茶碗で、大振りで胴の横方向のヘラ目が見所のお茶碗です。
またお茶室を模した展示があり、燕の軸、雲竜釜、古染付葡萄棚水指、蕎麦茶碗と初夏らしい取り合わせもよかったです。
秋には開館30周年記念名品展Ⅱが予定されており、こちらも楽しみです。
展覧会情報
- 名称
- 春季特別展 「開館30周年記念 名品展Ⅰ」
- 会場
- 野村美術館(京都市左京区)
- 会期
- 2013年4月16日~2013年6月2日
- 公式サイト
- http://www.nomura-museum.or.jp/