」華やかさと侘び
大阪の湯木美術館にて「茶の湯の漆器 利休と不昧のデザイン」を拝見しました。
湯木美術館は、懐石料理「吉兆」の湯木貞一(明治34(1901)~平成9(1997))により昭和63年(1988年)に開館しました。多くの美術館が旧財閥や大会社の社長によって設立したことが多い中、湯木貞一という料理店の店主が設立したというのは珍しいことです。
三十六歌仙の軸「在原業平」や唐物茶入「富士山」「紹鴎茄子(一名みをつくし)」、志野茶碗「広沢」等々趣味の良い道具ばかりで、本当によく蒐集されたと感心し、思わずため息をついてしまいます。
また美術館の一階には吉兆「正月屋」という和食レストランがあり、湯木氏が美術館に来たお客様がリーズナブルに吉兆の懐石料理を楽しんでもらおうと作られたお店です。ここではゆったりとお値打ちの懐石がいただけるお勧めのお店です。
今期は、千利休と松平不昧が好んだものを中心とした漆器の茶道具の展覧会です。
漆器の茶道具の種類は多く、点前道具として棗、水指を始め、炭道具は香合、炉縁、懐石道具は四つ碗、折敷、汁椀、小吸物碗、引盃、縁高等々あり、また珍しいところでは茶碗、茶杓もあるというようにバラエティに富んでいて釜以外のほとんどの茶道具がありそうです。
今回の展示のポイントは「華やかさと侘び」と感じました。蒔絵の文様の華やかな美しさと、無地の真塗の詫びた美しさを、次のように対比して展示していました。
華やかな蒔絵
杜若蒔絵小棗・・伊勢物語九段東下りを描いたぎゅっと詰まった美
住吉蒔絵平棗 山本春正作・・金蒔絵にちょっとしぶい銀をあしらって
片輪車蒔絵香合 出雲松平家伝来
侘びた真塗
黒大棗 山科宗甫在判
黒小棗・又隠棗 千宗旦在判 千家名物
青貝心経香合 黒無地に般若心経「心経曰 無限耳鼻舌 身意」文字
蒔絵は美しさがぎゅっと詰まっていて、緻密な絵を見ていますと飽きません。
片や真塗は凛とした美しさがあり、千利休が濃茶に用いた気持ちも納得できます。
展示室の奥の大きなケースでは、折敷、縁高、椀、盆等々と懐石道具を中心に展示されていました。
ここで湯木氏が料理人であったことを思いだし、懐石道具には思い入れも多かったのではと思いました。
あと茶室を模したケースもあり、季節の取り合わせを展示することが多いのですが、今回は十三代飛来一閑作の将棋盤と樂惺入作の将棋駒といった珍しい作品が並べられていました。
(ケースとはいえ、本格的な茶室として作るようにと湯木氏が指示したと聞いたことがあります)
展覧会情報
- 名称
- 平成25年 春季特別展「茶の湯の漆器―利休と不昧のデザイン―」
- 会場
- 湯木美術館(大阪市中央区)
- 会期
- 2013年4月2日~2013年6月9日
- 公式サイト
- http://www.yuki-museum.or.jp/