動き出しそうな-造形美

智美術館 入り口
菊池寛実記念 智美術館にて隠崎隆一氏の個展「事に仕えて Serving for Integrity」を拝見してきました。
隠崎氏は、1950年(昭和25)、長崎県生まれで、デザイン会社勤務を経て、岡山県備前市で備前焼作家の伊勢﨑淳氏に師事し、独立後は岡山県瀬戸内市長船に窯を築いて昨陶活動を続けています。
今回は、1983年の修行時代からオブジェを含む最新作まで30年に渡る作品が並びます。
会場に入りますと、Zoiと名づけた大きなオブジェが向かえてくれ、茶碗や茶入、香合といった茶道具も少しありますが、多くはデザイン性の高い造形美に富んだ作品です。
それぞれの作品に、次のようにシリーズ名を付与しています。
・芯韻・・sceneを表現
・北想・・苦難に立ち向かう心を北に向かう鳥で表現
・zoi・・人間を表現
・ファランクス・・古代ギリシャの重装歩兵の密集陣形のイメージを表現
・双・・一双の形を表現
・水蛭子・・神話イメージを表現
これらのシリーズを実現するために隠崎氏は、穴窯/登窯/電気窯、山土/田土/その他をブレンド、ロクロ/手捻り/表面の削り等のようなさまざまな技法を組み合わせて作っています。
備前焼の材料は、通常田土と呼ばれるきめ細かい土を使うのですが、隠崎氏は外部参入者ということで田土をなかなか確保できず、荒い土である山土や混淆土をブレンドして使っています。
逆にそのような制限から、荒々しい様子や岩石のような佇まいといった、さまざまな土の表情・素材感を表現しています。
隠崎氏の作品は、頭や足と見られるような造形が多く、あたかも人や人物のようで、今にも動きだしそうな印象を受け、夜中にこの会場を散歩したり、作品同士で会話をしているような想像をしてしまいました。
今回の展覧会のタイトルの「事に仕えて」は、解説では、「『自然への畏敬の念とあるがままの心を表現すること』という隠﨑氏の作陶理念を表した言葉です」とあり、また英語のタイトルの「Integrity」の意味の「誠実・健全・清廉」は隠崎氏の信念ではないかと思いました。
●展覧会情報
隠崎隆一 事に仕えて
菊池寛実記念 智美術館(東京都港区)
2014年1月18日~2014年3月30日
http://www.musee-tomo.or.jp/index.html

智美術館に隣接する西洋館