樂と文様の可能性
樂美術館にて、「樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放」を拝見して参りました。
予想外に種類が多く、「装飾」ということで一階の展示室は、長次郎の黒筒茶碗「村雨」以外は、次のように文様の入ったお茶碗が並んでいました。
常慶・・黒菊之絵
一入・・黒・赤桐文
左入・・赤将棋之駒絵、赤兎之絵
長入・・黒竹之絵
旦入・・黒梅鉢文、白竹之絵 等
慶入・・白貝貼浮文
意外とバラエティに富んでいて、特に慶入の白樂は見込に立体的な貝を貼っており、お茶を飲み干すと貝が登場するという凝った作りでした。
二階に上がりますと、樂の懐石道具や香合がならび、これらも絵が入ったものが多いです。
その中では、絵をご母堂が描きご当代が作った赤樂草花之絵四方香合が珍しい親子合作で、興味深く拝見致しました。
さらに上がった最後の展示室は、釉薬が装飾となったお茶碗が展示され、まず印象的なのは、のんこう作の黒樂「荒磯」で、黒地に白い蛇蝎釉が、あたかも海岸で砕ける波のようです。
その後は、ご当代作のお茶碗が続きます。
焼貫黒樂茶碗「女媧」と赤樂茶碗「月波」は久しぶりに拝見します。
どちらも月のような釉薬の跡があり、そこに因んで命銘されたようです。
今回一番心に残りましたのは、ご当代作の黒樂茶碗「橘花的皪」です。
全体は丸みを帯びていて、見込は黒釉、外側は黒釉とグレー釉が掛けられています。
黒釉の下に覗く白土の鮮やかさを愛で、白く浮き立つ橘の花を思い浮かべ蘇軾の漢詩から、橘花的皪」と命銘されたとのことです。
銘の元になりました蘇軾(蘇東坡)の漢詩は、「三月二十九日二首」で、「門外橘花猶的皪 (門の外に咲くみかんの花はなおあざやかに輝き)」とあります。
展覧会情報
- 名称
- 樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放
- 会場
- 樂美術館(京都市上京区)
- 会期
- 2015年3月7日~2015年8月2日
- 公式サイト
- http://www.raku-yaki.or.jp/