コンパクトにまとまっている「人格的教養」習得の手助け本
肩書きだけ見ますと、心理学の教授がお茶を学究的にまとめたものと思いましたが、茶名をお持ちですし、内容を読めばお茶の稽古を積まれたことがすぐ分かります。
作者は「教養」を「知識としての教養」と「人格的教養」に分け、人格的教養(哲学、人間観、社会観等の主に人文的な教養)をにより重きを置いています。
また人格的教養は抽象的な感覚であり、知識的修練をとおしてのみ習得されるが、知識そのものではなく、その人の置かれた文化によって磨かれるとしています。
さらに人格的教養は、何か特定の専門性を深めることによってしか身につかないともあり、その特定の専門性として茶道を取り上げています。
序論はここまでで、ちょっと回りくどく学問的に書かれていますが、それ以降は次のように、茶道の知識的修練を行うにあたって手助けとなる知識の解説が書かれています。
・茶と禅のリレーションシップ ・茶道のキーパーソン ・千利休のレボリューション ・流派の解説 ・「侘び」のコンセプト ・キーワード別にみる侘びの美観(点前の真行草、楽茶碗、茶入、茶杓・・) ・茶人のことば
どれもコンパクトに分かりやすく書かれていまして、茶道を嗜む人もそうでない人も、茶道の教養のコンセプトに触れることができ、お勧め致します。
ただ惜しむらくは、コンパクトにまとまっているためにどの項目も物足りなく感じてしまい、知識を深めるときには他の書籍にあたる必要があります。
ですので、ページを費やして序論を分かりやすく記述し、茶道の知識のボリュームを増やした版を希望します。
そうしましと一生手元に置く本になり、以前にお勧めした「裏千家茶道」と二冊があればお茶の「道・学・実」が学べると思います。
書籍情報
- タイトル
- 一億人の茶道教養講座 (淡交新書)
- 著者
- 岡本 浩一
- 出版社
- 淡交社
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