楽しく深いお茶の話
作者の井口海仙氏(明治33年-昭和57年、1900年-1987年)は裏千家十三代家元圓能斎の三男で、前家元鵬雲斎大宗匠の叔父にあたります。
井口氏は、兄の十四代家元淡々斎の補佐役として活躍しました。
活動は、裏千家の機関誌の主宰、新修茶道全集や茶道辞典をはじめとするさまざまな書籍の出版、茶道研修所(現裏千家学院)の講師、珍しいところでは数々のテレビ番組に出演など茶道の普及に務めました。
内容は、
第一章 茶道こぼれ話 第二章 食べ物談義 第三章 茶染随筆
という構成で、第一章は、名残り、続き薄茶、炭斗、茶筅、棗・・といったお茶の言葉の解説です。
ただ他の本と違うところは、名残とは・・と一次的な言葉の説明だけでなく、古書を調べ、古老に話を聞いてさらに一歩踏み込んだ解説が書かれ、勉強になります。
例えば「雪吹(ふぶき)」という上下に面取りしている茶器があり、これは「吹雪の夜では上も下も分からないように上下見分けがつかないのでふぶき名付け、さらに洒落て漢字を上下逆さまにした」とはよく聞きますが、古には雪を蓄える「雪次」と名付けられ、次代が経つにつれ「雪吹」と書かれるようになったということです。
第二章、第三章は食べ物やお茶に因んだ内容で、勉強になりほっとするちょっとよい話です。
井口氏が亡くなられてから三十年以上が経ち、今後も、このようにお茶の楽しくて深い話をお書きになる方が活躍されればよいなと思います。
書籍情報
- タイトル
- 新版 茶の湯読本
- 著者
- 井口 海仙
- 出版社
- 淡交社
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