いちわん

~ 楽在一碗中 ~
佐川美術館 「吉左衞門X 暗闇の音 静寂の光」展

佐川美術館 「吉左衞門X 暗闇の音 静寂の光」展

樂茶碗とアートする

佐川美術館

湖に浮かんだような佐川美術館の建物。奥に見えるのが樂氏設計の茶室。

佐川美術館で開催されている「吉左衞門X 暗闇の音 静寂の光」展と同館で開催された「光の茶会」に行ってきました。

佐川美術館は、佐川急便により1998年3月に開館し、日本画の平山郁夫館、彫刻の佐藤忠良氏に続き、樂吉左衞門館が2007年に開館されました。

「吉左衞門X」とは樂吉左衞門氏(昭和24(1939)~)と、さまざまなテーマとのコラボレーションの展覧会で、今までプリミティブアートとのコラボややフランスでの作陶といった展覧会がありました。

今回は、アーティストグループ「ダムタイプ」のパフォーマンスやインスタレーションの創作に携わり、映像・照明・舞台装置等を手がける高谷史郎氏(昭和38(1963)~)と樂氏とのコラボレーションです。

樂茶碗と映像でどのような展覧会になるのか想像ができず、実際に拝見・体験して驚きの連続でした。

主な展示を説明します。

 

<Planar Sound system 暗闇の音・静寂の音>

樂吉左衞門館の階段を下りるとホワイエという広間に立ちますと、音が聞こえてきました。ホワイエには5本の黒い柱のような回転するスピーカーがあり、そこから音が聞こえてきます。

金属の音、お祭りの時のさざめきのような音、川の流れのような音・・それらが、一方向ではなくあちらこちらから聞こえて来ます。不思議な感覚でした。

後のお茶会で樂氏から話を聞きまして、音の正体は鞘から取り出した樂茶碗が冷める音、樂茶碗を焼くふいごの音、樂茶碗を削る音・・とのことでした。

 

<レーザプロジェクション>

展示室の最初は、今回のために焼いた無地の黒茶碗に、グリーンのレーザ光線を当てて模様を描いていました。茶碗が直線やドットの光で煌めいていました。お茶碗をキャンバスをするという試みは初めて拝見しました。

 

<Topograph>

樂茶碗とその後ろに抽象画のような写真が飾られていました。これは樂茶碗の周りから360度スキャンした写真を横に伸ばしたもので、嶽月や吹馬といった焼貫茶碗を展開した様子は、ラスコー洞窟やチブサン古墳の壁画のようで、お茶碗とは全く別の新しいアートの誕生を感じました。

樂氏の大胆な造形・デザインを活かしたもので驚くと同時に感動しました。

 

<120°Projection>

展示の最後は、これも今回のために焼いた白茶碗3碗に動画が映し出されていました。

動画は「戦争」「災害」といったキーワードによりインターネット上で検索したもので数秒単位に小刻みに場面が変わって行きます。

樂氏は、解説で「礫釉茶碗はあるが白茶碗は作ったことがない。なぜならば薄暗い茶室の中で「白」は光であって、一輪の花である。だからそれは茶の湯を通じて多用すべきでなく、制約の掛かるべく領域としてある。」と書かれて、さらにお茶会では、「お茶は和敬清寂と言っているが世の中には平和だけでなく争いや災害がある。それをこの作品で表現したかった。」と話をされて、思わず背筋が伸びてしまいました。

 

<光の茶会>

お茶会は広間の俯仰軒で行われました。席入のために歩いた地下の路地に老子や外国の詩を崩れ落ちる文字で映し、待合には佐川美術館の空が小さな丸いガラスに映し出されていました。

席にはいると床は、3つのディスプレイで水中から空を見上げた動画(雨が降っていた)を映していました。

席主は樂氏で、ゲストとして高谷氏も席中に入りました。樂氏のお話では壁画のようなTopographを気に入られたようで、「もらって帰って、茶席の床に掛けようか」ともおっしゃっていました。

他にも鋭い話や楽しい話もあり、いつもの樂氏のお茶会のように元気をいただきました。

 

主な道具組は次のとおりです。
水中から空を見上げた動画 高谷氏作
風炉先 銀箔 高谷氏作
水指 焼貫 樂氏作 中塗で研いだ蓋を添う
茶器 一閑中次暁塗 飛来一閑 作
茶杓 如心斎作 銘「水辺」
茶碗 樂茶碗(今回の展覧会のために焼いたもの) 樂氏作
ルビニヤック焼茶碗 樂氏作
蓋置 ルビニヤック伽藍 樂氏作

 

展覧会情報

展覧会チラシ

名称
吉左衞門X 暗闇の音 静寂の光
会場
佐川美術館(滋賀県守山市)
会期
2012年9月29日~2013年4月7日
公式サイト
http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/

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