光悦に囲まれて
五島美術館にて「光悦-桃山の古典(クラシック)」を拝見してきました。
今展覧会は、本阿弥光悦(1558~1637)の事績(作品)を「書跡」、「陶芸」、「漆芸」、「出版」に分けて展示しており、これほど光悦の作品が一堂に揃うことは珍しいことと思います。
会場に入りますと、正面に名古屋の数寄者森山勘一郎(1887~1980)が弱冠十六歳で手に入れた黒茶椀「時雨」が迎えてくれ、会場の両脇には光悦の書がずらりと並びます。
書は華やかな和歌色紙・巻と侘びた消息(手紙)が対照的です。
和歌色紙・巻は、金銀墨絵のきらびやかな下絵に、流麗な書で和歌を書き付けていて、書の美しさ、紙の空間とのバランスが見事で、一幅の美術品と言えます。
また書は流麗に加えて、のびのびと書かれており、書を楽しんでいる光悦の姿が想像できます。
消息は、流麗さではなく、知人や友人に思いを伝えようとしている素朴な印象です。特に吉左衛門(樂二代常慶(~1635))への「茶碗四つ分の土を持ってくるように」という手紙が印象に残り、光悦と樂家の親密な関係が窺えました。
書ともう一つの見所は、光悦の茶碗です。黒、赤、飴釉、白・・と二十碗が展示されていました。
主なお茶碗を挙げました。
黒楽茶碗「時雨」、「雨雲」、「村雲」、「七里」
赤楽茶碗「乙御前」、「雪峯」
飴釉楽茶碗「立峯」
白楽茶碗「冠雪」
膳所光悦茶碗
この中で、個人的にNo1と思いますのは、赤楽茶碗「乙御前」です。何度拝見してもそのキュートさに魅了されます。手にして薄茶一服いただきたくなります。
もちろん他のお茶碗も素敵で、「雨雲」の切れ味のよさ、「雪峯」の迫力にも惹かれます。
そして今回初めて拝見したのが、膳所光悦茶碗です。これは小堀遠州(1579~1636)が品川御殿に三代将軍徳川家光の御成の時に、遠州が光悦に頼んで二つ作らせた茶碗です。
以前、遠州流家元の記事で写真が掲載されていまして、拝見したいと思っていまして今回叶いました。枇杷色で細かい貫入が全体に入っていました。
二つは似たお茶碗かと想像していたところ、もう一つは白土と黒の釉薬が掛かっており、形はよく似ているものの、受ける印象はだいぶ違っていまして驚きました。
光悦の作品を、一挙に拝見できる絶好のチャンスで、お勧め致します。
展覧会情報
- 名称
- 光悦-桃山の古典(クラシック)-
- 会場
- 五島美術館(東京都世田谷区)
- 会期
- 2013年10月26日~2013年12月1日
- 公式サイト
- http://www.gotoh-museum.or.jp/index.html