いちわん

~ 楽在一碗中 ~
名物裂を探る―織り込まれた歴史と美展

名物裂を探る―織り込まれた歴史と美展

光悦の品格

サンリツ服部美術館

諏訪湖の畔にあるサンリツ服部美術館

長野県上諏訪のサンリツ服部美術館にて「名物裂を探るー織り込まれた歴史と美」を拝見して参りました。

サンリツ服部美術館は、元セイコーインスツルメンツ・セイコーエプソン社長の故服部一郎氏(1932~1987)が蒐集した美術品を展示するため、服部氏が愛した諏訪の地に1995年に開館されました。
茶道具の名品と近現代の西洋絵画がコレクションの中心です。

今回は主たる展示は名物裂ではありますが、特別出品されている本阿弥光悦(1558~1637)作白楽茶碗「不二山」に目を奪われました。

不二山は、国宝に指定された国焼茶碗の二つのうち一つ(もう一つは志野茶碗「卯花墻」)で、そのステータスを知らなくても圧倒的な存在感があります。

先日、五島美術館の光悦展(※)で多くの光悦のお茶碗を拝見しまして、そのどれとも異なる「品格」を感じます。

もちろん乙御前も雨雲もどれも素敵で洒落ていますが、不二山は格の高さを持っています。茶事でいえば、不二山で凛とした濃茶をいただき、肩の力を抜いて乙御前でお薄をいただくイメージです。

不二山は他の美術館での拝見は叶わないようで、この機会にぜひご覧くださるようお勧め致します。不二山を拝見するためにサンリツ服部美術館に訪れる価値は十分あります。

不二山は、現在畠山記念館にあります光悦作赤楽茶碗「雪峯」とともに姫路藩主酒井家から売り立てがあり、畠山即翁氏(1881~1971)がどちらか選べるチャンスがあったとのことです。その時即翁氏は、「不二山の酒井家か酒井家の不二山か」というほどの縁を慮り、雪峯を選び譲り受けることにしました。

即翁の茶人の心が窺えるエピソードで、もしかしたら畠山記念館で不二山を拝見できたかも知れません。

本展「名物裂を探る」は、裂を次の五つに分類して、主にその裂を仕覆としたお茶入と合わせて展示していました。

1.印金・金襴
2.緞子
3.間道
4.錦・モール
5.更紗

茶入の筆頭は、唐物茄子茶入「紹鴎茄子」で、大名物の貫禄で金襴二つ緞子二つの仕覆が添っています。

それと他の美術館ではあまり見られない展示方法として、キャプションとともに次のようなキャッチフレーズが書かれていました。なるほどと思うものやそのまま・・というものもあり、学芸員の方の工夫が偲ばれました。

「まるで霞のように」 (高野切第一種 伝紀貫之筆)
「アーチの中にいる龍」 (瓦燈龍金襴)
「三角形のリズム」 (針屋金襴)
「よろける縞の間道」 (日野間道)

サンリツ服部美術館は、都心になく、交通は少々不便でありますが、その分ゆっくりと拝見でき、作品も充実しており重ねてお勧め致します。

また、「不二山」が他での拝見は叶わないということで、究極の光悦展は、ここサンリツ服部美術館で開催されることを願いいつつ、諏訪湖を後にしました。

※五島美術館「光悦-桃山の古典(クラシック)」のレビュー記事はこちら

諏訪湖

諏訪湖

 

展覧会情報

2013_m021_02

名称
名物裂を探る 織り込まれた歴史と美 ~特別出品 本阿弥光悦作 国宝 白楽茶碗 銘 不二山
会場
サンリツ服部美術館(長野県諏訪市)
会期
2013年9月28日~2013年12月20日
公式サイト
http://www.sunritz-hattori-museum.or.jp/

« »