いちわん

~ 楽在一碗中 ~
井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ展

井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ展

大井戸、小井戸、青井戸

根津美術館 茶室「披錦斎」

根津美術館 茶室「披錦斎」

東京 根津美術館にて、「館蔵の井戸茶碗でたのしむ茶席」と「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」展に行って参りました。

「館蔵の井戸茶碗でたのしむ茶席」は、「井戸茶碗」展に合わせて、根津美術館のお茶室にて美術館所蔵の井戸茶碗でお茶をいただく企画で、所蔵品でお茶会を開催するのは初めてとのことです。

当日は天気もよく、お茶室の披錦斎の名前のとおり、紅葉が美しき錦のような庭園を歩き、お茶室に向かいました。

美術館のお茶会ですと、薄茶席が多く、道具の取り合わせも親しみやすい場合が多いのですが、今回は井戸茶碗で濃茶ということで、居住まいを正すような道具組でした。

床: 石室善玖墨蹟 寒山詩
花入: 古銅六角
花: 白玉椿
釜: 芦屋桐文
水指: 南蛮縄簾
茶入: 名物 唐物丸壺 銘 青山 徳川秀忠所持
袋: 雲鶴緞子 間道織留
茶碗:
  青井戸茶碗 銘 滝川
  青井戸茶碗 銘 鳴戸
  青井戸茶碗 銘 鶴
  小井戸茶碗 銘 芝山
  小井戸茶碗 銘 秋の山
茶杓: 織田貞置作

床、花入、釜、水指とも濃茶席にふさわしく格が高いものでした。

驚いたのは、茶入「青山」で、根津美術館の創立者である根津青山が自分の名に因んで入手したといういきさつがあり、美術館のある意味代表のような茶入で、お点前に使ってくださるとは予想していませんでした。

茶碗はどの井戸茶碗も長い間大事に伝わってきたということがよく分かり茶染も継ぎも愛でたいお茶碗でした。

そして濃茶の美しさ・・緑がとてもよく映えており、お茶碗はお茶をいただくことこそ本当の姿だということがよく分かりました。
 
 

お茶席の感激のまま美術館の展示室に向かい、「井戸茶碗」展を拝見しました。

そこは右を向いても左を向いても井戸茶碗で、大井戸、小井戸、青井戸に分類して展示していました。

そのほとんどが、口開き、轆轤目、見込みの目跡、竹節状の高台、高台まわりの梅花皮(かいらぎ)、高台の中の兜巾、総釉といった井戸茶碗の特徴を備えています。

ではお互いそっくりかというとそうではなく、それぞれ個性を持ったお茶碗で、自然と自分の好みのお茶碗を見つけることができます。

その中で心に強く印象つけられたのは次の三碗です。

大井戸茶碗 銘 喜左衛門
・・本当に堂々としたお茶碗で、大井戸の中でも頭抜けていると思います
大井戸茶碗 銘 有楽
・・井戸茶碗の中では落ち着いた佇まいで、惹かれました
青井戸茶碗 銘 柴田
・・茶染みもほとんどなく、美しいお茶碗です

もしどれかいちわんを手元に・・ということでしたら、喜左衛門や有楽は格が高すぎて道具組みも点前も困りそうで・・柴田で自分のお茶事をしてみたいと想像していました。

図録には、武者小路千家の千宗屋若宗匠は、過去の所持者を挙げ、これほど多くの茶人に愛された茶碗は井戸茶碗だけだと執筆されています。

そこには武野紹鴎に始まり、利休、信長、秀吉、家康、織部、三斎、有楽、少庵、宗旦、遠州、光悦、不昧、宗雅といった戦国武将や大名茶人や、藤田香雪、益田鈍翁、原三溪、根津嘉一郎、松永耳庵、畠山即翁、湯木貞一ら近代の数寄者が名を連ねています。

樂茶碗は茶の湯の茶碗として生まれていますが、流派によっては茶事・茶会であまり使われない場合があり、より多くの茶人に選ばれるということでは井戸茶碗に軍配が上がるように思えます。

井戸茶碗を体感し、堪能できたお茶会と展覧会でした。

井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ

●井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ
根津美術館(東京都港区) 2013年11月2日~2013年12月15日
http://www.nezu-muse.or.jp/

« »