文人のコレクション
齋田記念館にて「茶の湯の心」展を拝見しました。
齋田記念館は、地元で名主を勤め、明治になりましてから本格的に製茶業を始めた齋田氏の自宅を改築したもので、今年で十五周年を迎えました。
所蔵品は、茶に関する書籍が多いことが特徴で、他にも代々の齋田家文人の書跡・典籍・絵画や茶道具・民具等があります。
展示会場は、蔵の一部屋で、ゆっくり見渡せる広さです。隣のご自宅は、塀で中を窺うことはできませんが、広大な庭園があるようで、紅葉をかいま見ることができました。
今回の展覧会は、早稲田大学會津八一記念館に所蔵されている「富岡重憲コレクション」から茶道具を中心に出品されています。
富岡重憲氏(1896-1979)は、日本の地熱開発事業の先駆者として活躍するかたわら、書道や茶道にも通じた文人でした。そのコレクションは、富岡美術館で20年以上公開されていましたが、美術館の閉館後、會津八一記念館に収められました。
コレクションは鑑賞陶磁と白隠などの近世禅書画が中心で、禅書画を手掛かりに禅の神髄に触れようとしていたようで、数寄者というよりも文人の趣が感じられました。
今回の展覧会で一番拝見したかったものは、珠光印のある達磨図で、昭和初期に「茶道全集」に記載されて以来77年ぶりの公開です。迫力のある筆法に見とれていました。
珠光というと茶人、侘び茶の創始者、と思いこんでいましたが、画人としての珠光の存在説もあることは今回の展示で初めて知ることができました。茶人珠光と画人珠光は同一人物か否かは江戸時代から結論が出ていない難問とのことです。
他に惹かれましたのは次の作品です。
蛤蜊観音図 白隠慧鶴筆
蛤蜊から現れた観音さまのユーモラスな絵に救われる思いがしました
竹茶杓 杉木普斎作
幅広、櫂先長く大胆な茶杓です。
普斎は、下削り師はなく、全て自分で削っていたと聞いたことがあり、普斎の勇壮さを感じます
黒楽茶碗 銘破れ窓 長次郎作
長次郎らしいかせた筒型のお茶碗で手にすっぽりと収まるようです。お茶を点てれば息を吹き返すような気がします
雨漏茶碗 銘荷葉
茶染みが美しい、銘(蓮の葉)のような清楚でしっとりしたお茶碗です
唐津分銅型香合
分銅は宝尽の文様にもあります吉祥の形で、青磁や織部が有名で、唐津は珍しいです。
梅が枝とぐりぐり文様が描かれた柔らかな印象を受けました。
齋田記念館は、週末に開館している日が少なく、なかなかチャンスがなかったですが、今回やっとお伺いすることができました。
また展示のパンフレットが素晴らしく、一般的に作品一覧のみ掲載している展覧会が多いですが、齋田記念館では全作品の写真と展示用の解説に加え、作者は箱書した宗匠といった関連した人の略歴まで掲載されていまして、通読すればかなり勉強することができます。
●開館十五周年記念特別展 茶の湯の心
~早稲田大学會津八一記念博物館「富岡重憲コレクション」から~
齋田記念館(東京都世田谷区)
2013年10月26日~2013年12月13日
http://saita-museum.jimdo.com/