いちわん

~ 楽在一碗中 ~
根津青山の至宝展(根津美術館)

根津青山の至宝展(根津美術館)

最期まで茶人としての矜持を

 根津青山の至宝展(根津美術館)

根津美術館にて「根津青山の至宝」展を拝見して参りました。

今回は、美術館の礎となった数寄者である初代根津嘉一郎(1860-1940)が蒐集した名品揃いの展覧会で、通常は季節の取り合わせを展示している二階も使用しての大規模なものです。

内容は、根津美術館の実力を示すような豪華なラインナップで到底全部を紹介しきれず、特に心に残りました作品を挙げます。
(展示の中で茶会の取り合わせがあり、タイトルを< >で表します)

◆第一部◆
初期のコレクションは、書画と青磁が多くを占めています。ここで惹かれましたのは次の二点です。
・青磁浮牡丹文瓶 龍泉窯
  すっきりとした青磁の花入です
・鶉図 伝李安忠筆
  国宝の愛らしい鶉の図で、軍配形の表装が珍しいです

<夕陽山水図披露の茶会 1924/11/23>
軸に夕陽山水図を用いての茶会です。
茶入に中興名物 瀬戸正木手茶入「正木」、茶碗に伊羅保茶碗「淀屋」を取り合わせた秋らしい風情です。
中立の折りに松平不昧旧蔵の雲州銅鑼を鳴らし、参加者は「山寺の晩鐘聴くような」との感想を漏らし、銅鑼の音を想像しながら拝見しました。

◆第二部◆
ここでは国宝の那智瀧図が見事です。茶室ではなかなか掛けきらないような大掛軸で、胡粉で描いた瀧が見事です。

<瓜虫図披露の茶会 1930/6/13>
軸に瓜虫図、金襴手獅子鈕香炉、羅浮山盆石、蒔絵硯箱を取り合わせた夜話茶会です。
灯火がゆらめいて「さながら東山時代の書院に来たかのよう」との感想で、皆がため息をつく様子が想像できました。

◆第三部◆
嘉一郎をめぐる道具ということで、ここでは膳所光悦に惹かれました。
膳所光悦は、小堀遠州が徳川家光の御成に際して本阿弥光悦に作らせた二つの茶碗です。二碗とも形は筒と似ており、枇杷色で萩風のお茶碗をお出しして、白土と鉄釉のお茶碗を控えとしました。二碗が揃うのは五島美術館の光悦展以来かと思います。

◆第四部◆
名品選で、これまで以上の名品揃いでこの中で特に惹かれましたのは次のとおりです。
・鼠志野茶碗 美濃
・雨漏茶碗 蓑虫
・芦屋梅松文真形霰釜
・伊賀耳付花入 寿老人
・唐物肩衝茶入 松屋
・青井戸茶碗 柴田
・交趾大亀香合
・玉子手茶碗 小倉
この中で、松屋肩衝は王者の風格で、珠光・利休・織部・遠州の四つの仕覆が添えられています。
柴田井戸は美しく、日本一の青井戸茶碗だと思います。

この他にも、次の茶会の取り合わせが展示されていました。
<雲州銅鑼を聞く茶会>
<昭和北野大茶会>
<永久決別の歳暮茶事>

「永久決別の歳暮茶事」は、1939年12月23日から27日に開催されたもので、体調が悪い中、政財界の名士三十数名を迎えて茶事を行い、その約一週間後の1940年1月4日に嘉一郎は亡くなりました。
最期まで茶事を行った嘉一郎が持つ、茶人の矜持に深く感じ入りました。

  
  

●展覧会情報

根津青山の至宝
根津美術館(東京都港区)
2015年9月19日~2015年11月3日
http://www.nezu-muse.or.jp/




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