いちわん

~ 楽在一碗中 ~
琳派400年記念 光悦ふり 光悦名碗と様式の展開(樂美術館)

琳派400年記念 光悦ふり 光悦名碗と様式の展開(樂美術館)

時間を超えた光悦と吉左衞門氏の邂逅

琳派400年記念 光悦ふり 光悦名碗と様式の展開

樂美術館にて「琳派400年記念 光悦ふり 光悦名碗と様式の展開」を拝見して参りました。

樂家当代である十五代樂吉左衞門氏の本阿弥光悦への思い入れの強さが分かる展覧会で、拝見しているこちらもわくわくしてきました。

ロビーの花は吉左衞門氏が入れるとのことで、お伺いした折には、シミ竹の花入に椿とやや赤みがかった照葉が入れられていました。

一階の展示室に入ると、正面中央に光悦の「雨雲」が展示されていました。

これは三井記念美術館から・・と思ったところ、樂家六代左入の「雨雲」写黒樂茶碗でした。

「雨雲」は何回か拝見したことがあり、切り落とした口作り、丸みを帯びた胴、釉薬の縮れ具合までそっくりでした。

今回の展示テーマである「光悦ふり」は「光悦らしさ」や「光悦っぷり」とでも言うのでしょうか、展示には次のように解説されていました。

「光悦ふり」は、光悦の写しとは異なるもので、次のような特色を持つ茶碗のことである。

1.口辺の端反りと流れるような曲線
  「雨雲」、「時雨」、「村雲」

2.胴部、腰部の丸くおおらかに張り出す姿と誇張
  「紙屋」、「何似生」

3.腰底部にめり込むようにつけられた小さな高台
  「紙屋」、「立峯」、「乙御前」

4.口部を放りはなつ鋭い篦あと
  「雨雲」、「時雨」、「村雲」

 

一階の展示室では、「光悦ふり」のお茶碗が並んでいました。主なお茶碗は次のとおりです。

六代左入 赤樂茶碗「桃里」・・正面が窯割れしており金継ぎしていました

久田宗全 赤樂茶碗「除夜」・・母は宗旦の娘で、宗全は利休のひ孫にあたります

九代了入 黒樂茶碗・・七里写しで黒に白いヌケがあり、箱に了入自らが「光悦形」と記しています

十五代吉左衞門 黒樂茶碗「秋菊」・・陶淵明の「秋菊有佳色」から名付けられました

十五代吉左衞門 赤樂茶碗「花仙」・・吉左衞門氏が一番好きだという光悦の「乙御前」にイメージが重なります

 

二階に上がりますと、吉左衞門氏、川喜多半泥子ら、そしていよいよ光悦の登場です。主なお茶碗は次のとおりです。

仁阿弥道八 飴釉樂茶碗「紙屋」写・・光悦の「紙屋」を綺麗に写しています

十五代吉左衞門 黒樂茶碗「噴壑(ふんがく)」・・光悦形でエネルギーが吹き上がるような力強さに溢れています

川喜多半泥子 志野茶碗「あつ氷」・・白茶碗で光悦「冠雪」に似ています

川喜多半泥子 赤樂大茶碗「閑く恋慕」・・大きな光悦「乙御前」のようです

本阿弥光悦 飴釉樂茶碗「立峯」、白樂茶碗「冠雪」、黒樂茶碗「東」、黒樂茶碗「村雲」、赤樂茶碗「文億」・・どれも自由闊達な光悦のお茶碗です

三代道入 黒樂茶碗「撫牛」・・「光悦ふり」の特色はなく、厚い釉薬がかかっており、明るくてモダンです

樂代は、光悦ぶりのお茶碗を作っています。

ところが、光悦と直接親交があった樂道入は光悦写しを作っていないようで興味深いです。

解説には次のようにありました。

様式・形ではなく、作陶の精神を光悦から学んだことが、道入の「光悦ふり」である

展示を拝見して、光悦→半泥子→吉左衞門氏の流れを感じました。

次のように解説されていました。

 「半泥子も当代吉左衞門も、その作陶の根底には光悦が窺えますが、それは光悦形の模倣ではありません。

  それぞれの作家の中に自然と現れた光悦の趣き、光悦の自由な作陶の精神であると言えるでしょう」

四百年の時を経て、光悦と吉左衞門氏の出会いを拝見した気が致します。

 

●展覧会情報

琳派400年記念 光悦ふり 光悦名碗と様式の展開
樂美術館(京都市上京区)
2015年9月5日~2015年12月23日
http://www.raku-yaki.or.jp/

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