センセイの月釜
著者の熊倉氏は、元林原美術館長、現静岡文化芸術大学学長を務めていらっしゃる日本文化史学者で、お茶の講演会やテレビによく登場されますので、ご存知の形も多いと思います。
この本はお茶に関する豆知識と茶者の体験談が中心です。
「うんちく」というと鼻に付くような場合もありますが、熊倉氏の人となりのよさで、そのような嫌味はなく、楽しく読めます。
例えば次のようなうんちくが書かれています。
・ご飯茶碗は、お茶を飲まないのに「茶碗」というのか。
・茶人杉木普斎の初鰹の逸話
・高橋掃庵が書いた40年前の手紙を茶席に掛けた小林逸翁の話
・明治の中ごろの歳暮茶会の話
熊倉氏の夢は、「この人に会いたい」という気持ちの客と「この人とともにお茶を飲みたい」という亭主が語り合え、気軽に集える月釜を掛けることとあります。
この月釜は、人が中心であるため、道具は季節で決まったものを使い、一年経てば同じ道具に出会うことで時の流れを感じることができます。
この話を読みまして、本当に「お茶」の心を持ったかただな、と感激しました。
熊倉氏はアカデミックな学者でお茶人という稀有な存在です。
皆さまにお薦め致します。
書籍情報
- タイトル
- 茶の湯日和 うんちくに遊ぶ
- 著者
- 熊倉功夫
- 出版社
- 里文出版
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