侘び茶の茶事を拝見
監修者の堀内宗心宗匠は、久田家とともに表千家を支える茶家である堀内長生庵前庵主で、流派を越えて、茶道界における侘び茶の第一人者であると言えます。
この本は、堀内宗匠が亭主となって催した茶事を書籍とDVDで記録したもので、堀内宗匠の茶事をゆっくりと拝見することができます。
茶事は、待合に始まり、腰掛待合、席入、亭主挨拶、初炭、主菓子と進み、中立後、濃茶、懐石、後炭、薄茶と一部始終が収録されています。
今回は残暑の中、濃茶を午前中に済ませ、その後昼の食事となる懐石をいただたく、といった前茶形式の茶事で、正式な正午の茶事とは異なる趣向です。
亭主によっては、華やかな道具や現代アートの道具を使う場合もありますが、堀内宗匠は、「これぞ千家の侘び茶」の道具組で行いました。
ここでは、茶事の順番やお客の振る舞いを追うのではなく、ぜひ茶事そのもの、侘び茶のこころを感じていただければと思います。
また茶道具好きの方には、美術館や茶道具店で眠っているのではなく、茶事に使われて生き生きとした道具の数々を堪能できます。
心に残りました道具は、
残暑ということで爽やかさを演出する
銘も涼しげな 高取ヘラ目耳付茶入 銘「谷川」
蓮の葉を伏せた形の 荷葉釜海老鐶付
白木の 桐木地小四方棚
侘びた趣の
瀬戸渋紙手一重口水指
濃茶には 蕎麦茶碗
薄茶には 了入作黒平茶碗 銘「石清水」
お客様に因んだ
覚々斎作茶杓 銘「松」
これらが実際に運び出され、お茶を点てているのを拝見していますと、わくわくします。
それと堀内宗匠の優しい所作や穏やかなお話も見どころです。
余談になりますが、茶事において亭主が、初座は十徳、後座は濃茶で格を上げて紋付と袴というように着替える場合があります。
堀内宗匠は十徳のまま、初座はグレーで後座は明るいベージュと着替えられて、なかなかお洒落だなと思いました。
書籍情報
- タイトル
- 堀内宗心茶事 風炉編
- 著者
- 堀内宗心(監修)
- 出版社
- 世界文化社
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