名品と名物裂と百貨店の茶室
東京世田谷の五島美術館で「茶道具取合せ展」を拝見して参りました。
<名品の数々>
展示室に五島美術館の茶室を再現し、茶事をイメージした、向付や鉢といった懐石道具を始め、炭道具、掛物、点前道具まで数多くの茶道具が展示されていました。
名品揃いで、全て紹介したいところ、特に印象深い道具を挙げます。
・古伊賀水指 銘「破袋」
古田織部(1544-1615)が見出した破格の水指で、その迫力、ダイナミックな造形はなかなか言葉では伝え難いです。
関東大震災で焼失した古田織部の添え文の写真が展示されてあり、その文のとおり、「今後これほどのものはない」という水指です。
・瀬戸瓢形茶入 銘「春慶瓢箪」
中興名物で愛らしい瓢箪形の茶入です。
・伯庵茶碗 銘「冬木」
江戸幕府の医官曾谷伯庵(1569-1630)が所持した伝来から、伯庵茶碗と呼ばれる、堂々したお茶碗です。
小堀遠州(1579-1647)の箱書が付き、松平不昧(1751-1818)も古今名物類従に記事を書いたという名碗です。
五島美術館は、伯庵茶碗「朽木」も保有しています。
・鼠志野茶碗 銘「峯紅葉」
亀甲文と桧垣文のお茶碗で、鼠志野茶碗の中で名碗と思います。
<名物裂>
名物裂を収めた裂箪笥の展示があり、箪笥とともに名物裂も拝見できました。
裂箪笥は鴻池家伝来で、昭和8年以来の公開という貴重なチャンスです。
箪笥には引き出しに「古金襴」、「緞子」、「漢島」と書かれてあり、中にしまわれている次のような名物裂も展示されていました。
金襴:大徳寺金襴、白地二重蔓牡丹金襴
緞子:珠光緞子、道玄緞子
漢島:鎌倉間道、望月間道
<映画の茶道具>
映画美術として制作され、映画「利休にたずねよ」で使用された次の茶道具が展示されていました。
・緑釉の香合
映画で重要な役割を持つ小ぶりな香合です。緑色が綺麗です。
・井戸茶碗、熊川茶碗
リハーサルや転がすといった本物のお茶碗が使えないときに使用した、写しの茶碗です。
・伊賀耳付花入
映画で利休が耳を欠いた花入で、片側の耳が欠けていました。
<百貨店の茶室>
取合せ展に、井戸茶碗 銘「いはほ」、別名「東横井戸」という茶碗が展示されていました。
解説には東横百貨店(現東急百貨店東横店)で茶室披きをする際に、五島慶太氏(1882-1959)が表千家十三代家元の即中斎宗匠(1901-1979)に銘をつけていただたことからの別名とのことで、今回、初めて知りました。
現在、百貨店のお茶室は・・と考えて、知る範囲では新宿の京王百貨店しか思いつきません。
当時は他の百貨店にもお茶室を持っていたのでは・・
●茶道具取合せ展
五島美術館(東京都世田谷区)
2013年12月7日~2014年2月16日
http://www.gotoh-museum.or.jp/