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~ 楽在一碗中 ~
名画を切り、名器を繋ぐ展

名画を切り、名器を繋ぐ展

切って繋げる和の美学 意外な名品にも出会えます

名画を切り、名器を繋ぐ

根津美術館で「名画を切り、名器を繋ぐ」展を拝見して参りました。

展示は掛物の唐絵から始まり、国宝の「瀟湘八景図 」が出迎えてくれます。

続いて廬山図の掛物で、ぱっと見ただけでは分かりませんが、なんと元の絵から右上三分の一を切り取って表装したもので、そのトリミングの大胆さに驚きました。

空海の書は、逆に書の前後に絵を繋いでいます。お経から作った断簡や和歌集から作った石山切・栂尾切と自由自在に切り張りしています。

切り張りすることによって元の姿が分からなくなりますが、逆に危険分散になり、石山切のように様々な災害から逃れたものもあります。

色紙や絵巻の断簡を見ていきますと、佐竹本三十六歌仙の斎宮女御が展示してありました。

佐竹本の一番人気で、切断したときに鈍翁がどうしても手に入れたかったという逸話がある歌仙絵です。

歌仙絵は元々は巻絵で、扱い易さからほとんどは江戸時代以前に切断されています。

ところが、この佐竹本は大正時代まで巻絵の形を保っていまして、今回の「切って繋いで」のテーマにぴったりです。

他にも佐竹本は小大君と小野小町が並んでいました。

展示室を移動しますと、茶道具が展示されていまして、青磁輪花茶碗 「馬蝗絆」、唐物肩衝茶入「松屋」、同「松山」、瀬戸尻膨茶入「伊予簾」と名品がずらりと並んでいます。

馬蝗絆茶碗は鎹で補修されていてすぐ「繋げて」いることが分かります。

でも茶入は繋いだ様子もなく何故?と思いながら拝見しますと、松屋肩衝は龍三爪緞子仕覆が地球儀のように細かい裂を繋いでいまして、松山茶入は砕けたところを漆で繋いでいるということが分かりました。

さらに進むと大井戸茶碗「須弥」(別銘十文字)があり、古田織部が大きさを調整しようと十文字に割って繋ぎ直したと言われている、まことに大胆なお茶碗です。

そして名品の赤楽茶碗「乙御前」が登場です。

何故ここに乙御前が・・と思ったところ、窯割れがあるという解説を見て、なるほどと納得しました。

隣には長次郎茶碗の破片を繋いだ「木守」、また破片を呼継ぎして作った志野茶碗もありました。

このように展示を拝見しますと、「切って繋げる」ことは日本の美学ではないかと感銘を受けました。

西洋ではモネの「草上の昼食」ように破損したため絵を切ったということはありますが、歌仙絵や断簡のように鑑賞のために切り出すということは聞いたことがないです。

また陶器は西洋では破損した箇所が分からないように復元するという考えた方のようですが、茶道具では繋いだところが分かるように修復し、それを景色として楽しみ、さらに元の姿より一層愛おしむといったこともあります。

これは改めて考えると不思議なことだなと思います。

 

●展覧会情報

新創開館5周年記念特別展 名画を切り、名器を継ぐ
根津美術館(東京都港区)
2014年9月20日~2014年11月3日
http://www.nezu-muse.or.jp/

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