生き続ける釜
泉屋博古館にて、「茶の湯釜の美」展を拝見してきました。
室町以前から昭和に至るまでの住友家の四百年の釜が並びました。
今回は、芦屋釜と天明釜から始まり、大西家・西村家といった釜師順に展示されていました。
展示された釜師はそのほとんどが絶家してしまい、十六代と永きに続いていますのは、千家十職の京都大西家で、その大変さ・偉大さが分かります。
印象に残った釜を挙げます。
[芦屋釜]
・芦屋松竹梅丸紋真形釜・・端正な形
[天明釜]
・古天明日の丸釜・・荒々しい釜肌
[京大西家]
美しさと侘びの両方を兼ね備えた京釜の代表的釜師で歴代の作品が並びました
・海老鐶付網千鳥地紋釜・・大西浄清、大西家歴代一の名手
・老松唐犬釜・・大西浄玄
・玄々斎好鯱釜写・・大西浄寿
・東方朔釜・・大西浄長、住友春翠の絵を鋳込んだもので三井泰山より還暦祝として送られたもの
[京名越家]
・日の丸釜・・名越浄味
[西村家]
・老松菊地紋蒲団釜・・西村道仁
[江戸大西家]
・筋兜切合 唐金平丸風炉添・・大西五郎左衛門、京大西家から分家した
[江戸名越家]
・桐紋釜・・名越弥五郎
[宮崎家]
・仙叟好丸釜・・宮崎寒雉
[春翠と大阪の釜師]
・瓢箪釜・・大国柏斎、大阪の釜師
・大講堂釜写・・佐々木彦兵衛、大阪の釜師
さらに、釜の展示だけでなく、「芦屋釜の里」の協力で、釜の作り方の説明もありました。
デザインや釜の設計に始まり、土で鋳型を作り、鉄を流し込み、鋳型を壊して取り出します。
釜の断面を展示されていまして、鋳型の中子(中型)と外型の隙間で制御している鉄の厚さがほぼ均一で、その技術力の高さに驚きました。
第二室では、大正八年の十二代住友友親追悼茶会の道具組が展示されていました。
メインは、友親が蒐集したものの茶会に使うことなく亡くなってしまった、「小井戸茶碗 銘六地蔵」で、このお茶碗に合わせて、茶入は「瀬戸肩衝茶入 銘真如堂」、軸は宗旦筆「日々是好日」といった名品が並びます。
また、今回の展覧会では、異形の戦国武家フィギュアを作成しているアーティストの野口哲哉氏が参加し、ユーモラスな分福茶釜のイラストが展示され、メタルフィギュアがミュージアムショップに登場しました。
会場を後にするときに改めて拝見しますと、静かに釜が並び、一見枯れて見えますが、四百年経っても釜は生き続けているのではと思いました。
●展覧会情報
茶の湯釜の美
泉屋博古館 分館(東京都港区)
2014年11月1日~2014年12月14日
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/