いちわん

~ 楽在一碗中 ~
好み物の世界

好み物の世界

茶人のデザイン力

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好み物とは序章に「特に茶道具において、茶人や宗匠方によって、その道具の姿・形について、その意匠(デザイン)を自分の思いを表現することによって出来た道具の姿・形を指します」とあります。この本は、主に裏千家の家元によってデザインされた道具を集めたものです。

素晴らしいデザインの棗
好み物として棗は多く、この本に取り上げられた中でベスト3と思う棗を紹介します。

曙棗
十一代の玄々斎に好まれ、八代宗哲によって作られました。目にも鮮やかな曙色(淡紅色に黄味を帯びた色)の朱塗の上に黒絵で松と鶴を描いた香次形の茶器です。長男一如斎の「点茶始披露」の折りに好まれました。有名な茶器で、初釜等で写しをご覧になった方も多いと思います。

梅月棗
十四代淡々斎に好まれ、十四代一閑と十一代宗哲の合作です。曙棗と違いざっくりとした朱塗の一閑張大棗に梅の木一幹と銀蒔絵の月、金蒔絵の梅花を描いたのもので、梅の香漂う春の夜の雰囲気が表現されています。

亀蔵棗
十三代圓能斎に好まれ、一閑によって作られました。黒塗の一閑張中棗に、朱漆と青漆で一から九までの点が配置されています。これは九星を文様化したもので、そのデザインが現代的で素晴らしいです。

変化していく好み物・・再好
好み物の中では、先達が好んだ物を別の道具に変化させて好むという「再好」という考え方があります。

苫屋棗
九代不見斎が好んだ松ノ木香合を、玄々斎がとまや香合として松溜塗から焼杉に変えて好みました。さらに淡々斎は苫屋棗という別の道具にして好みました。

更好棚
お稽古でよく扱います更好棚は、利休好みの三重棚を玄々斎が天板を取り去って使いやすく再好みしたもので、名前も「更に好む」の意味で「更好棚」と名付けられました。更に十五代鵬雲斎により黒塗爪黒更好棚として再好みされています。

個々の好み物の由来やその意味が詳しく書かれており、お茶の奥深さの一端を学ぶことができて他流派の方にもお勧め致します。

また裏千家の好み物の資料としては、茶道資料館で発行している「裏千家歴代好み物」という600頁を越える大部の本があり、鵬雲斎までの五百数十点の好み物が紹介されています。

 

書籍情報

タイトル

好み物の世界: 茶の湯の道具 宗匠方が託した趣の沙汰

著者

目片宗弘

出版社

淡交社

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