「する茶」への手がかり
「する茶」のすすめ
著者は「する茶のすすめ」として、冒頭次のように書いています。
『利休以来、当初は「する茶」ばかりであったが、明治以降「教える茶」が中心となってしまった。これからは「する茶」と「教える茶」のバランスを取り戻さないと茶道界の新しい展開はない。「する茶」が増えれば点前作法を学ぶ必要があり、「教える茶」も発展するはずである。』
「教える(教わる)茶」も楽しいですが「する茶」の茶事はさらに楽しいと思います。でもそれを実現するにはどうしたらよいかという疑問には著者は次のような考えです。
『茶事を継続して実施するには、グループを作って「しなければならない」環境にすることが第一として、著者自身も三十年前からグループを作り主客持ち回りで現在まで茶事を継続して行っている。』
これは良いアイデアで、一人で茶事を行おうと思ってもなかなか実現できないですが、グループで持ち回りにしますと刺激も強いですし実施しようというモチベーションが向上します。
また著者は、茶事は楽しいだけでなく『茶事は亭主となる人の人格と教養のすべてを使い、日本人が育ててきたあらゆる文化を取り込みながら、室礼と振舞でもってもてなしする。茶事には亭主の全人格と教養が表れるといっても過言ではない。』としています。
確かに茶事を行いますと、茶事のテーマや道具の取り合わせで亭主の教養や趣味の良さ、言動や所作や気配りの様子で人となりが分かってしまいます。怖い反面、亭主の自分を知ってもらうこと、亭主の方をよく知ることという楽しみもあります。
趣向へのアプローチ
このような提言を踏まえて、茶事の趣向へと話が進みます。
源氏物語「匂宮」、東大寺「お水取り」、追善、七夕、重陽、口切、「仮名手本忠臣蔵」、歳暮・・と茶席や茶道具の写真も多く、解説も豊富で、わくわくしながら読みました。
私もグループを作って茶事を継続して実施できればと思っています。
流派のお茶ではなく茶事中心に書かれていますので、流派に関係なく、お茶好きや茶事に興味のある方にお勧め致します。
書籍情報
- タイトル
- 茶道具は語る: 記憶に残る茶事を催すコツ
- 著者
- 筒井 紘一
- 出版社
- 淡交社
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