いちわん

~ 楽在一碗中 ~
展覧会

天才陶工 仁阿弥道八展

一番作りたかったものは

「天才陶工 仁阿弥道八」展
サントリー美術館にて「天才陶工 仁阿弥道八」展を拝見して来ました。

展覧会の解説に「人気はあるが展覧会としてまとまって公開されることはほとんどない」とありました。

確かに、道八の道具は、茶会でよく使われて有名で人気があり、展覧会では取り合わせの中で登場するのですが、初めての「道八展」です。

会場に入りまして、まず驚かされて微笑んでしまったのは、色絵狸炉蓋でした。

炉の火を温存するためのもので、炉の上にユーモラスな焼物の坐像を置くという、今では奇抜な発想です。

「道八」と名前を聞きますと、華やかな色絵の茶碗や懐石道具を思い浮かべてしまいます。

ところが今回、会場を回ってその考えが間違っていることがわかりました。

樂茶碗ののんこう写しから始まり、次のように続々と写しが続きます。

焼物総覧といった印象です。
 
  樂茶碗利休七種、仁清、乾山、
  青磁、白磁、染付、
  祥瑞、伊羅保、オランダ、
  交趾、蕎麦、三嶋、
  御本立鶴、絵高麗 等

変わったところでは、ドイツの徳利写しもありました。

どれも見事な写しで、道八の技術力の高さをうかがい知ることができました。

焼物の産地は、中国、朝鮮、日本、東南アジア、ヨーロッパと各地に点在しており、どのように道八は本歌を入手したのかと興味は尽きないです。

作品を沢山拝見しているうちに、道八のイメージが京焼からさまざまに変化し、道八に、「一番作りたかったものは何ですか」と問いかけたくなりました。
 
道八は何と答えてくれるでしょう。
 
・・・ 狸の炉蓋かも知れません。
 

色絵狸炉蓋

(写真はチラシより)


最後に所蔵者を見ますと、東博や京博、野村美術館、逸翁美術館、湯木美術館といった著名な美術館のみでなく、個人蔵や小ぶりな美術館、寺院とあり、幅広く道八の作品を集めました、サントリー美術館関係者のご苦労に感謝致します。
 
 

●展覧会情報

天才陶工 仁阿弥道八
サントリー美術館(東京都港区)
2014年12月20日~2015年3月1日
http://www.suntory.co.jp/sma/

五島美術館 茶道具取合せ展(平成26年度)

美術館のお宝拝見

五島美術館 茶道具取合せ展

五島美術館にて「茶道具取合せ展」を拝見してきました。

取合せ展は年に一回開催され、何か一つのテーマではなく、五島美術館所蔵の茶道具を取合せて展示するイベントで、普段拝見できないお道具を拝見できるよいチャンスです。

その取合せは、美術館にある三つのお茶室(立礼の冨士見亭、広間の古経楼、小間の松寿庵)でのお茶会を想定しています。

例えば広間の古経楼では高台寺蒔絵の炉縁、松寿庵は小間の風情で寸松庵の沢栗の炉縁といったようにです。

また今回は織部四百回忌を記念したためか、会場入口には、「黒織部茶碗 銘わらや」、一番奥には織部所持の「古伊賀水指 銘破袋」、さらに織部の茶杓や消息、好みの筋釜、織部舟形手鉢と縁の品々が並びます。

その他にも、定家や光悦の書、「黄瀬戸立鼓花生 銘ひろい子」、「鼠志野茶碗 銘峯紅葉」、「瀬戸肩衝茶入 銘月迫」、それに徳利・盃・向付といった懐石道具等、名品が並び、見応えがあります。

別室には、「茶箱・茶籠の特集展示」が開催されていました。

会場では16種類の茶箱・茶籠が展示され、16世紀の高麗根来茶箱から平成の篠竹茶籠まで時代を超えて並びました。

本来の茶箱・茶籠だけでなく、引出やヨーロッパの革張のケースを見立てたものもあり、楽しく拝見しました。

茶箱・茶籠に収められた、茶器・茶碗・茶杓・香合等も一緒に展示され、本展に負けず劣らずこちらも見事な取合せ展でした。
 
 

●展覧会情報

茶道具取合せ展
五島美術館(東京都世田谷区)
2014年12月13日~2015年2月15日
http://www.gotoh-museum.or.jp/

没後400年 古田織部展

織部と宗箇の絆

没後400年 古田織部展
銀座松屋で開催されました「没後400年 古田織部展」を拝見して参りました。

今年は古田織部(1544-1615年)が没してから400年ということで、織部ゆかりの茶道具を中心とした展覧会です。

「織部の時代」という章では、織部がいた時代・桃山時代の様子も俯瞰しようということで、屏風や小袖、甲冑、銚子、書籍、書状・・とさまざまなものを展示しており、織部時代に対するイメージが膨らみました。

「織部の茶の湯」という章では、織部所有の硯や織部焼を始めさまざまな茶道具が並びました。

特に惹かれましたのは、
  織部作の茶杓
  備前・伊賀の花入
  御所丸茶碗
  瀬戸黒茶碗
  志野茶碗 銘小倉山
  鼠志野茶碗 銘横雲
  大西浄清作 鷺地紋車軸釜
  黒織部茶碗

織部が指導した
  薩摩焼肩衝茶入 銘サイノホコ
  織部肩衝茶入 銘喜撰

といった茶道具です。

特に黒織部茶碗は高台脇に織部の花押が鉄絵で描かれたと言われる貴重なものです。

その後の「織部の世界」という章では、いよいよ織部焼の茶道具が並びます。

代表的なものは、
  織部耳付茶入 銘餓鬼腹
  織部香合
  黒織部茶碗
  織部向付
  織部瓢形振出
  織部扇形蓋物
  織部木瓜形蓋物
  織部手付四方形鉢
  織部州浜形手付鉢

で、特に四方形鉢は鴻池家伝来の秀作でした。

織部の焼物は、向付のような一揃えでも同じ文様を拝見したことがなく、何度出会っても不思議に思います。

また会場中央には、織部の高弟であった上田宗箇ゆかりの茶室の写しが作られ、宗箇流若宗匠のお点前のビデオが流されました。

織部のお茶は、織部流として伝わっているようですが、この展覧会では、織部の弟子の上田宗箇のお茶を取り上げまして、織部と宗箇の絆の強さを感じました。

宗箇流のお点前は、武家流ということで、侘びておらず、式正な印象を受けました。

 

●展覧会情報

没後400年 古田織部展
銀座松屋(東京都中央区)
2014年12月30日~2015年1月19日
http://www.matsuya.com/m_ginza/

茶の湯釜の美展

生き続ける釜

泉屋博古館 分室

泉屋博古館にて、「茶の湯釜の美」展を拝見してきました。

室町以前から昭和に至るまでの住友家の四百年の釜が並びました。

今回は、芦屋釜と天明釜から始まり、大西家・西村家といった釜師順に展示されていました。

展示された釜師はそのほとんどが絶家してしまい、十六代と永きに続いていますのは、千家十職の京都大西家で、その大変さ・偉大さが分かります。

印象に残った釜を挙げます。

[芦屋釜]
・芦屋松竹梅丸紋真形釜・・端正な形

[天明釜]
・古天明日の丸釜・・荒々しい釜肌

[京大西家]
美しさと侘びの両方を兼ね備えた京釜の代表的釜師で歴代の作品が並びました
・海老鐶付網千鳥地紋釜・・大西浄清、大西家歴代一の名手
・老松唐犬釜・・大西浄玄
・玄々斎好鯱釜写・・大西浄寿
・東方朔釜・・大西浄長、住友春翠の絵を鋳込んだもので三井泰山より還暦祝として送られたもの

[京名越家]
・日の丸釜・・名越浄味

[西村家]
・老松菊地紋蒲団釜・・西村道仁

[江戸大西家]
・筋兜切合 唐金平丸風炉添・・大西五郎左衛門、京大西家から分家した

[江戸名越家]
・桐紋釜・・名越弥五郎

[宮崎家]
・仙叟好丸釜・・宮崎寒雉

[春翠と大阪の釜師]
・瓢箪釜・・大国柏斎、大阪の釜師
・大講堂釜写・・佐々木彦兵衛、大阪の釜師

さらに、釜の展示だけでなく、「芦屋釜の里」の協力で、釜の作り方の説明もありました。

デザインや釜の設計に始まり、土で鋳型を作り、鉄を流し込み、鋳型を壊して取り出します。

釜の断面を展示されていまして、鋳型の中子(中型)と外型の隙間で制御している鉄の厚さがほぼ均一で、その技術力の高さに驚きました。

第二室では、大正八年の十二代住友友親追悼茶会の道具組が展示されていました。

メインは、友親が蒐集したものの茶会に使うことなく亡くなってしまった、「小井戸茶碗 銘六地蔵」で、このお茶碗に合わせて、茶入は「瀬戸肩衝茶入 銘真如堂」、軸は宗旦筆「日々是好日」といった名品が並びます。

また、今回の展覧会では、異形の戦国武家フィギュアを作成しているアーティストの野口哲哉氏が参加し、ユーモラスな分福茶釜のイラストが展示され、メタルフィギュアがミュージアムショップに登場しました。

会場を後にするときに改めて拝見しますと、静かに釜が並び、一見枯れて見えますが、四百年経っても釜は生き続けているのではと思いました。

 

●展覧会情報

茶の湯釜の美
泉屋博古館 分館(東京都港区)
2014年11月1日~2014年12月14日
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
泉屋博古館分室

日本国宝展

国宝としての茶道具

日本国宝展

東博の「日本国宝展」を拝見して参りました。14年振りの国宝展です。

期間中に展示替えがありまして、一度で全てを拝見することはできませんが、当日は縄文時代の土偶から弥生時代の銅鐸や金印、飛鳥時代の厨子、平安時代の絵巻物、鎌倉時代の仏像・・と各時代の国宝がずらりと勢揃いです。

その中で、今回拝見できました茶道具は、「流れ圜悟」こと「圜悟克勤墨跡 印可状」、「玳玻天目茶碗」「大井戸茶碗 銘 喜左衛門」「志野茶碗 銘 卯花墻」でした。(光悦の樂茶碗「不二山」は残念ながら出品されていませんでした)

いずれも名品で、通常のお茶の展覧会ならば、メインとして展示され、注目を浴びるところです。

ところが今回は数多くの国宝の中に埋もれてしまい、特にお茶碗はぽつぽつと置かれてあまりめだたず、気をつけないと見つからずに通り過ぎてしまうところでした。

ただ他に圧倒されて印象も薄れがちな中、それでも国宝の一員して存在感を持ち、頑張っているなと感じました。

その他に印象に残りましたのは、次の国宝です。

  玉虫厨子(教科書に載っていました)
  五体の土偶(縄文の女神、仮面の女神、縄文のビーナス・・)
  金印(「漢委奴国王」の金印)
  元興寺極楽坊五重小塔(1/10の大きなミニチュアで建造物です)
  雪舟の「秋冬山水図」(こちらも目立たなかった・・)
  善財童子立像(国宝のニューフェイスでかつ今回の目玉、愛らしくダイナミック)

まだまだ紹介しきれない国宝が多数あり、日本美術の勉強をしているようでした。
 
 

●展覧会情報

日本国宝展
東京国立博物館平成館(東京都台東区)
2014年10月15日~2014年12月7日
http://www.tnm.jp/

大名茶人 松平不昧の数寄-「雲州蔵帳」の名茶器展

不昧、遠州、そして即翁

畠山記念館

畠山記念館にて「大名茶人 松平不昧の数寄」展を拝見してきました。

会場に入りますと、油屋肩衝、松平粉引、細川井戸が迎えてくれました。

漢作唐物茶入 「油屋肩衝」は真に堂々とした茶入で、不昧が宝物之部に入れたことが納得できます。

今回は茶入の後ろに六つの仕覆(太子間道、下妻緞子、宗薫緞子、本能寺緞子、丹地雲文古金襴、紺綾地花兎文古金襴)がずらりと並び、いかに茶人に愛されて来たかということがよく分かります。

並んでいる粉引茶碗「松平」は三粉引(三好粉引、楚白粉引と)、井戸茶碗「細川」は三井戸(喜左衛門井戸、加賀井戸と)と数えられるように大名物之部に入る名品で油屋肩衝と並んでも遜色ありません。

どちらも美しく、お茶が綺麗に映える様子を思い浮かべました。

他にも瀬戸面取茶入「吸江」、唐物茶入「日野肩衝」、唐津茶入「思河」、彫三島、蕎麦茶碗、関宗長作黒小棗等名品が展示されていました。

「吸江」は、「西江の水を一口に吸尽くす」から命銘されて、即翁が荏原製作所のポンプにちなんで求めたということです。

その中で「吸江」と「思河」は、遠州と不昧の箱書が並んで展示されていて、不昧が遠州と同じように隷書で箱書しています。

また「和漢茶壺鍳定」では不昧が遠州に倣ってに定家様で書いており、不昧の遠州に対するリスペクトを感じます。

隷書は重々しい印象を受けるのに対して、定家様は楽しく書かれているように感じ、拝見しているこちらまでわくわくします。

軸は、畠山コレクションのスタートとなった「南楚師説墨跡 送別語」が展示されていました。

この後不昧の雲州蔵帳に添って即翁は収集して行きます。即翁は能登の守護大名である畠山氏の末裔で、そのこともあって大名茶道具に思いがあったとのことです。

ここに、小堀遠州-松平不昧-畠山即翁と繋がる茶の縁を感じます。

他に、不昧が喜左衛門井戸と交換に大徳寺から手に入れた掛物「猪頭蜆子図」や、油屋肩衝のコンテナのような次第等々も展示されています。

・・・

展示を見終わったあとで、美術館内のお茶室でお抹茶をいただきました。

今回は不昧公好みの松江・風流堂のお菓子と辻村史朗氏作の大井戸茶碗と粉引茶碗が運ばれました。

大井戸と粉引は、先ほど油屋肩衝と共に拝見したばかりの取り合わせで、その洒落た趣向にさすがお茶の美術館と感心致しました。

 

●展覧会情報

大名茶人松平不昧の数寄
畠山記念館(東京都港区)
2014年10月4日~2014年12月14日
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/index.html

茶箱遊び-匣・筥・匳展

小さなお茶の多次元宇宙

2014_m013_02_01

代官山ヒルサイドテラスにて、京都の漆器古美術店「うるわし屋」の堀内明美氏と布作家の昆布尚子氏が開催した、「茶箱遊び-匣・筥・匳」展を拝見してきました。

今まで京都で三回開催され、東京で初めての展覧会です。

会場に入りますと、抹茶用と煎茶用の茶箱・茶籠とそこに組み込む、茶碗、棗・・といった茶道具がずらりと並んでいます。

今回は抹茶・煎茶用それぞれ三十組を揃えたとのことです。

それぞれ一組ずつがお茶の世界を作り上げていて、まさに小さな「お茶の多次元宇宙」です。

茶室のお茶と違い、茶箱や茶籠では、多くの道具が仕覆に入っていて、その仕覆の裂の織や色合いも美的ポイントになります。

この展覧会では、茶箱・茶籠とそこに納める道具を選び抜いた堀内氏と布を取り合わせた仕覆を作った昆布氏とのコンビネーションが素晴らしく、その絶妙な取り合わせに、なるほどなるほどと納得しながら会場を回りました。

会場にあった大小さまざまな茶箱・茶籠の中で、特に小振りな茶籠に惹かれました。

茶碗や棗といった茶道具たちが、ぴったりひっそり茶籠に収められています。

この一組があれば、どこでもお茶会を開き、お茶を一服お出しすることができるなと思いました。

お茶会を開こうとしますと、場所や茶室の設え、茶道具の取り合わせといろいろ悩んでしまいますが、「茶籠一つあれば・・」どこでもお茶を楽しめます。

今回は茶箱・茶籠組だけではなく、個々の道具も選ぶことができまして、会場にいらした皆さまはご自分の手元の道具を思い浮かべながら、あれこれ迷っていらっしゃるようでした。

●関連記事
茶箱再び (書籍「茶箱遊び: 匣 筥 匳(はこ ハコ HAKO)」のレビュー)

2014_m013_02_02

●展覧会情報

茶箱遊び-匣・筥・匳 展
代官山ヒルサイドテラス(東京都渋谷区)
2014年10月3日~2014年10月5日
http://www.hillsideterrace.com/

襲名二十周年記念 十六代大西清右衛門茶の湯釜展

日本橋三越 襲名二十周年記念 十六代大西清右衛門茶の湯釜展
「襲名二十周年記念 十六代大西清右衛門茶の湯釜展」を日本橋三越にてを拝見して参りました。

日本橋三越では5年ぶりの個展です。

個展のパンフレットに襲名二十周年を迎えて 「この節目に改めて家祖の仕事を見つめ直し、自らの代で成すべきことを問いました。先祖から受け継いだのも、初めて試みたもの。新たな釜の魅力をお伝えできれば幸いに存じます。」 とありますように、古典的な釜から斬新な釜まで数多く出展され、大西氏の気合いが伝わってきます。

会場の入口には、鶴の釜と霰乙御前釜の釜が迎えてくれます。どちらも釜の造形美の到達点だと思います。

鶴の釜は二代大西浄清が本歌で、鶴が羽を広げた姿が見事に釜と融合しており、霰乙御前釜は、一つずつ手作業で押した霰の美しさに思わずため息が出てしまいます。

日本橋三越 襲名二十周年記念 十六代大西清右衛門茶の湯釜展
会場に入りますとほの暗い中で、釜その他の作品がスポットライトに浮かび上がり、茶席がないこともあり、落ち着いた雰囲気です。

2013年京都グラフィーで大西氏が撮影した写真がパネルとして展示されていました。

今回出品された作品は、釜、水指、茶杓、花入、蓋置、建水、菓子器、炭道具、煙管と種類も多く、見どころがたくさんあります。

主な釜は次のとおりで、この他にも入口にありました、鶴の釜や霰乙御前釜、織部筋釜、舵鐶付釜、四方口釜 唐銅八角鬼面風炉、猿候釜、末広釜、海老ノ釜、等様々な作品がありました。

・福寿釜
「福」という字が百種類の字体で鋳込まれていまして、八景釜とともに新作です
・八景釜
瀟湘八景を描いた釜
・仙人釜
仙人のユーモラスな姿が鋳込まれている釜
・鵝眼釜
「鵝眼」とは、円に四角い孔のある形が鵝(鵞鳥)に目に似ていることからつけられた銭の異称で、昔の銭の形を模したもの
・かどぐち釜
伏見城の門扉の蝶番を鐶付とし、古釘を用い、さらに現代の鉄と古今の融合を果たした作品
・市女笠釜
市で商う女性がかぶっていた笠を模した釜です
・源氏香透八角釜
本体に源氏香図を透かした八角の折羽を一体化した大変複雑にして優美な釜
・篝火瓶掛
かがり火を盛る篝を模した瓶掛で珍しいもの
・皐月釜
銅鐸のような形に麻糸の房をあしらった、茶道家の千種さつき氏をイメージした釜

以下、主な作品を名前のみ挙げます。

水指:釣瓶水指、唐銅日月水指
茶杓:南鐐茶匙、南鐐中節
花入:鶴首花入、曽呂利花入、唐銅末廣花入、唐銅沈金瓢形花入、唐銅経筒花入
蓋置:南鐐笹蟹蓋置、籠目蓋置、鐵五徳蓋置、一葉蓋置、南鐐三ツ人形蓋置、重松蓋置
建水:三盆入建水、尊形建水
菓子器:南鐐鍬形菓子器、南鐐四方盆、南鐐銘々皿
炭道具:風炉灰杓子、少庵形桑柄灰杓子、鉄素張針ノ目風炉火箸、桑柄炉火箸、鍮火箸、鐶(多数)、五徳
煙管:南鐐煙管

さらに今回は、次のように大西氏のギャラリートークがあり、分かりやすく釜の活きた知識を勉強することができ、大西氏の現在を知ることができます待望の展覧会です。

10月8日「釜の歴史:京釜とは」
10月9日「釜の肌と紋様」
10月10日「やつれと覆垂-名残の季に見る-」
10月11日「釜の扱い:釜の修理、修復」
10月12日「釜の蓋のはなし」
10月13日「釜の音-鳴り音の愉しみ-」

 

●展覧会情報

襲名二十周年記念 大西清右衛門茶の湯釜展
日本橋三越(東京都中央区)
2014年10月8日~2014年10月14日
http://www.seiwemon-museum.com/j/2014mitsukoshi.html

東山御物の美展

堂々たる唐物の世界

三井記念美術館 東山御物の美

三井記念美術館にて「東山御物の美」展を拝見してきました。

東山御物とは、足利義満らによって収集された将軍家のコレクションの美術品で、今回は唐物を中心とした展示です。

第一室に入るとまず唐物大海茶入「打曇」で、たっぷりと大きく堂々とした茶入です。

次が「初花よりもめづらしきかな」と命銘された唐物肩衝茶入「遅桜」で、こちらも堂々としており、二つとも将軍の茶入という印象です。

他には、根津美術館でも拝見した青磁輪花茶碗「馬蝗絆」に再開でき、青磁中蕪花瓶、玳被盞 鸞天目茶碗、第二室の国宝の油滴天目茶碗と唐物がずらりと並んでいます。

特に、玳被盞天目茶碗の見込に描かれた二羽の尾長鳥が美しく、しばし見とれてしまいました。

いつもは茶道具が並ぶ如庵写しの茶室に、今回は書院飾りをイメージして、硯屏、硯、筆、墨、水注といった文房具が展示されていました。

第四室は唐絵が並びます。

山水図、布袋図、寒山拾得図と墨絵の中でひときわ目立つのが、国宝の「紅白芙蓉図」で、ささやかな色遣いの紅と白の美しさに惹かれます。

その他にも唐物を中心とした名品が並び、唐物肩衝茶入「北野肩衝」、青磁筍花瓶、青磁香炉、屈輪文堆黒盆、屈輪文犀皮香合、唐物茶壺「夕立」、唐絵の叭々鳥図などが展示されていました。

よく拝見する侘び茶とはちょっと違った「東山御物」の世界を堪能できました。

 

●展覧会情報

特別展 東山御物の美
三井記念美術館(東京都中央区)
2014年10月4日~2014年11月24日
http://www.mitsui-museum.jp/index.html

名画を切り、名器を繋ぐ展

切って繋げる和の美学 意外な名品にも出会えます

名画を切り、名器を繋ぐ

根津美術館で「名画を切り、名器を繋ぐ」展を拝見して参りました。

展示は掛物の唐絵から始まり、国宝の「瀟湘八景図 」が出迎えてくれます。

続いて廬山図の掛物で、ぱっと見ただけでは分かりませんが、なんと元の絵から右上三分の一を切り取って表装したもので、そのトリミングの大胆さに驚きました。

空海の書は、逆に書の前後に絵を繋いでいます。お経から作った断簡や和歌集から作った石山切・栂尾切と自由自在に切り張りしています。

切り張りすることによって元の姿が分からなくなりますが、逆に危険分散になり、石山切のように様々な災害から逃れたものもあります。

色紙や絵巻の断簡を見ていきますと、佐竹本三十六歌仙の斎宮女御が展示してありました。

佐竹本の一番人気で、切断したときに鈍翁がどうしても手に入れたかったという逸話がある歌仙絵です。

歌仙絵は元々は巻絵で、扱い易さからほとんどは江戸時代以前に切断されています。

ところが、この佐竹本は大正時代まで巻絵の形を保っていまして、今回の「切って繋いで」のテーマにぴったりです。

他にも佐竹本は小大君と小野小町が並んでいました。

展示室を移動しますと、茶道具が展示されていまして、青磁輪花茶碗 「馬蝗絆」、唐物肩衝茶入「松屋」、同「松山」、瀬戸尻膨茶入「伊予簾」と名品がずらりと並んでいます。

馬蝗絆茶碗は鎹で補修されていてすぐ「繋げて」いることが分かります。

でも茶入は繋いだ様子もなく何故?と思いながら拝見しますと、松屋肩衝は龍三爪緞子仕覆が地球儀のように細かい裂を繋いでいまして、松山茶入は砕けたところを漆で繋いでいるということが分かりました。

さらに進むと大井戸茶碗「須弥」(別銘十文字)があり、古田織部が大きさを調整しようと十文字に割って繋ぎ直したと言われている、まことに大胆なお茶碗です。

そして名品の赤楽茶碗「乙御前」が登場です。

何故ここに乙御前が・・と思ったところ、窯割れがあるという解説を見て、なるほどと納得しました。

隣には長次郎茶碗の破片を繋いだ「木守」、また破片を呼継ぎして作った志野茶碗もありました。

このように展示を拝見しますと、「切って繋げる」ことは日本の美学ではないかと感銘を受けました。

西洋ではモネの「草上の昼食」ように破損したため絵を切ったということはありますが、歌仙絵や断簡のように鑑賞のために切り出すということは聞いたことがないです。

また陶器は西洋では破損した箇所が分からないように復元するという考えた方のようですが、茶道具では繋いだところが分かるように修復し、それを景色として楽しみ、さらに元の姿より一層愛おしむといったこともあります。

これは改めて考えると不思議なことだなと思います。

 

●展覧会情報

新創開館5周年記念特別展 名画を切り、名器を継ぐ
根津美術館(東京都港区)
2014年9月20日~2014年11月3日
http://www.nezu-muse.or.jp/