いちわん

~ 楽在一碗中 ~
展覧会

組むたのしみ(藤田美術館)

冴えわたる四季の取合せ

組むたのしみ(藤田美術館)

組むたのしみ(藤田美術館)

藤田美術館にて「組むたのしみ」を拝見して参りました。

今回は、美術館の名品を用いて四季の取合せを中心の展示でした。

季節を追って説明致します。
 

春の取合せ

桃や「わかくさ」、兜、蛤で春を表します。

・交趾桃香合 銘「みちとせ」
・備前緋襷肩衝茶入 銘「わか草」
・茶杓 銘「東方朔/藤の裏葉」 利休作
・黄瀬戸兜皿
・蛤形向付 慶入作

夏の取合せ

瀧の軸、花入、水指で涼しげです。
水指は黒釉に瀧のように白釉が流れています。
砂張でできた平舟花入に水を溜めこちらも涼しさを演出します。

・瀧山水図 伝祥啓筆
・竹花入 銘「那智」 覚々斎宗左作
・珠光青磁茶碗 銘「青簾」
・茶杓 銘「筧」 松平不昧作
・朝鮮唐津津呉形水指 銘「廬瀑」
・南蛮砂張平舟花入

秋の取合せ

軸、茶碗、茶杓で秋の月を表現します。
兎、芋頭、菊も秋の風物です。

・月下兎図 柴田是真筆
・砧青磁茶碗 銘「満月」
・茶杓 銘「仲秋」 覚々斎宗左
・南蛮〆切芋頭水指 銘「秋の月」
・菊花紋蒔絵香合

冬の取合せ

雪の文、霜夜で寒さを感じます。
そして埋火、年忘れで大晦日を思い浮かべます。

・祥瑞蜜柑香合
・雪の文 千利休筆
・古瀬戸分琳茶入 銘「霜夜」
・赤樂茶碗 銘「埋火」 宗入作
・茶杓 銘「年忘れ」 千宗旦作

 

このような素晴らしい取合せを拝見しますと、取合せがお茶の醍醐味ではないかと思います。

もし自分が茶事の亭主だったら・・とわくわく致します。

もちろん手元の道具でここまで揃えることはできませんが、何かポイントとなる道具を使って取合せにチャレンジしてみたいです。

季節の取合せとは別に、次のお茶碗も素敵で、お茶が一服いただきたくなりました。

・御所丸黒刷毛茶碗 銘「緋袴」
・本手利休斗々屋茶碗
・古井戸茶碗 銘「老僧」

 
 

展覧会情報

名称
組むたのしみ
会場
藤田美術館(大阪市都島区)
会期
2015年3月7日~2015年6月14日
公式サイト
http://www.city.okayama.jp/museum/fujita/

茶道具の創出・再生・世界化(湯木美術館)

吉兆と宝塚歌劇

茶道具の創出・再生・世界化(湯木美術館)

茶道具の創出・再生・世界化(湯木美術館)

湯木美術館で、「茶道具の創出(クリエイト)・再生(ルネサンス)・世界化(グローバル)」を拝見して参りました。

今回の三つのテーマは次のように解説されていました。

・創出(クリエイト)・・利休のように、茶道具を新たに作り出す
・再生(ルネサンス)・・光悦のように美の回帰や再生を行う
・世界化(グローバル)・・世界のさまざまな器物を茶道具に見立てる

小林一三(逸翁)氏(1873-1957年)は、湯木貞一氏(1901-1997年)より28歳年上で、両人とも数寄者として交流があったようです。

それぞれの特徴は、

湯木氏・・不昧の茶懐石がスタートで、遠州の綺麗さびと千家の伝統的お茶がベース
逸翁氏・・時代に即した新しい茶道感

であり、今回展示された茶道具もその違いを表しています。

三つのテーマに沿って、心に残った作品を挙げます。

・創出(クリエイト)

湯木氏・・長次郎黒樂「春朝」、のんこう黒樂「是色」
逸翁氏・・嵯峨嵐峡蒔絵中次

・再生(ルネサンス)

湯木氏・・宗旦茶杓「五条橋」、佐竹本三十六歌仙絵「在原業平」
逸翁氏・・光悦作黒茶碗、光悦筆新古今和歌集切

・世界化(グローバル)

湯木氏・・唐物小肩衝茶入「柿」、利休所持古銅ソロリ花入
逸翁氏・・イタリア草花文緑ガラス小壺茶器、秋草蒔絵螺鈿聖餅箱

この中で際立っていたのが「世界化(グローバル)」で、湯木氏は侘びた唐物中心に対して、逸翁氏は華やかなガラスやイエズス会のIHSマークの入った螺鈿の器が展示されていました。

その違いを拝見して、湯木氏の侘びた吉兆の茶懐石、逸翁氏の華やかな宝塚歌劇を連想しました。

 

●展覧会情報

平成27年 春季特別展 茶道具の創出(クリエイト)・再生(ルネサンス)・世界化(グローバル)(前期)
湯木美術館(大阪市中央区)
2015年4月3日~2015年6月7日
http://www.yuki-museum.or.jp/

川喜田半泥子物語展(あべのハルカス美術館)

光悦の再来

あべのハルカス

あべのハルカス

あべのハルカス美術館にて「川喜田半泥子物語」展を拝見してきました。

あべのハルカス美術館は、大阪の天王寺駅に直結しているあべのハルカスビルの16階に位置し、都市型美術館を目指して、2014年に開館しました。

館内は広く、景色が良くて明るい美術館でした。

川喜田半泥子(1878-1963)は、江戸時代から続く木綿問屋の跡取りとして生まれ、百五銀行頭取を務めるなど実業家として活躍しながら、陶芸・写真・書画、俳句等に豊かな才能を発揮しました。

陶芸は本業でないにもかかわらず魅力的な作品を次々と作成し、自由闊達な作風からも本阿弥光悦の再来ではないかと思いました。

また半泥子は、自分の作品でお金を得たことがないと聞いたことがあり、偉大なるアマチュアを標榜していたようです。

展覧会は、半泥子の子ども時代に始まり、木綿問屋ののれんや半泥子を育てた祖母の教え、半泥子が撮った写真や描いた絵、それに半泥子が集めた茶道具も展示されていました。

半泥子が集めた茶道具は、利休作といわれる竹一重切花入「音曲(おんぎょく)」(利休が韮山の竹で作った三つの花入の一つ、他は「園城寺」「尺八」)や光悦作といわれる赤楽茶碗「松韻」がありました。

半泥子は光悦を最も高く評価しており、この「松韻」を入手した時は感激ひとしおだったということです。

そして圧巻の半泥子の作品たちです。

素晴らしい作品も多く、その中で特に心惹かれたものを紹介致します。

伊賀水指「慾袋」

五島美術館蔵の伊賀水指「破袋」を拝見して制作した写しの三つの内の一つで、その迫力は本歌に負けておらず、
青海波の金継ぎは本歌をしのぐ試みで、それだけでも半泥子の実力が分かります。

井戸手茶碗「渚」

韓国の土で作られた侘びた肌合いに、水色の釉薬が鮮やかなお茶碗です。

粉引茶碗「雪の曙」

展覧会ポスターに取り上げられるほどの素晴らしいお茶碗で、白い釉薬に薄水色が混ざり、雪の朝の風情です。
決して端正ではなく、口作りは切れ目があり、傾いていますが、心惹かれます。
光悦が作るのではないかと思えるお茶碗です。

志野茶碗「不動」

「雪の曙」に比べると整った造形の中に力強さを秘めたお茶碗です。

刷毛目茶碗「これはこれは」

晩年に近づくにつれて、半泥子は大侘び茶碗と呼ばれる陶芸の極北に至る茶碗を作るようになります。
大侘び茶碗の「これはこれは」は、もはやこれ以上侘びて進化すると、お茶碗の範疇を超えてしまうと感じました。

今回展示された半泥子の作品の多くは、三重県にある半泥子ゆかりの石水博物館に収められ、拝見できる機会があります。

また半泥子の窯は、廣永窯として現在も続いており、孫弟子の藤村州二氏が作陶しています。

・石水博物館 http://www.sekisui-museum.or.jp/
・廣永窯 http://hironaga.web.fc2.com/

川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-

川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-

展覧会情報

名称
川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-
会場
あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)
会期
2015年3月17日~2015年5月10日
公式サイト
http://www.aham.jp/

高麗茶碗展(野村美術館)

高麗茶碗の勉強会

高麗茶碗展(野村美術館)

高麗茶碗展(野村美術館)


「高麗茶碗」展を野村美術館にて拝見してきました。

野村美術館は、高麗茶碗を数多く所持しており、今回は館蔵の茶碗のみで高麗茶碗の全貌を構成しています。

展示室に入りますとずらりと高麗茶碗が並び、拝見することによって勉強ができそうです。

展示されています高麗茶碗の種類は次のとおりです。

前期:従来窯

・蕎麦
・粉引
・玉子手
・青井戸
・井戸
・本手斗々屋
・堅手
・伊羅保
・熊川
・三島
・呉器
・刷毛目 等

後期:倭館窯

・御本雲鶴
・立鶴
・茂三
・狂言袴
・猫掻手
・柿の蔕
・御本三島
・御本呉器
・新熊川
・玄悦 等

この中で特に心に残りましたのは次のお茶碗です。

井戸茶碗 銘 坂本

坂本城主であった明智光秀が所持していたとの伝承があり、
また坂本周斎が所持していたこともあって命銘されたとのことです。
轆轤目、カイラギ、竹の節高台と井戸の特徴を備えており、
また大きく金継ぎされていることで侘びた風情でした。

三島茶碗 銘 土井

徳川家光の大老であった土井利勝が所持してことから命銘されました。
見込に三島、内面と外面に粉引、高台脇に刷毛目の三様の手法から「三作三島」と呼ばれています。
白い釉薬がとろりとしていて薄茶の緑が映えそうで一服いただきたくなりました。

御本立鶴

徳川家光が立鶴の絵を描き、小堀遠州が朝鮮に注文したとの伝承があります。
鶴も御本(朱色の発色)も美しく、大事に使われてきたことが分かります。
井戸や他の茶碗と違い、少しリラックスしながらお茶をいただけそうです。

また茶席飾のコーナーでは、名残ということで、粉引茶碗と柳桜蒔絵の茶器、金森宗和の茶杓が展示されており、過ぎゆく炉の季節の取合せでした。

 

展覧会情報

名称
高麗茶碗(前期)
会場
野村美術館(京都市左京区)
会期
2015年3月7日~2015年4月19日
公式サイト
http://www.nomura-museum.or.jp/

樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放(樂美術館)

樂と文様の可能性

樂美術館

樂美術館エントランス


樂美術館にて、「樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放」を拝見して参りました。

予想外に種類が多く、「装飾」ということで一階の展示室は、長次郎の黒筒茶碗「村雨」以外は、次のように文様の入ったお茶碗が並んでいました。

常慶・・黒菊之絵
一入・・黒・赤桐文
左入・・赤将棋之駒絵、赤兎之絵
長入・・黒竹之絵
旦入・・黒梅鉢文、白竹之絵 等
慶入・・白貝貼浮文

意外とバラエティに富んでいて、特に慶入の白樂は見込に立体的な貝を貼っており、お茶を飲み干すと貝が登場するという凝った作りでした。

二階に上がりますと、樂の懐石道具や香合がならび、これらも絵が入ったものが多いです。

その中では、絵をご母堂が描きご当代が作った赤樂草花之絵四方香合が珍しい親子合作で、興味深く拝見致しました。

さらに上がった最後の展示室は、釉薬が装飾となったお茶碗が展示され、まず印象的なのは、のんこう作の黒樂「荒磯」で、黒地に白い蛇蝎釉が、あたかも海岸で砕ける波のようです。

その後は、ご当代作のお茶碗が続きます。

焼貫黒樂茶碗「女媧」と赤樂茶碗「月波」は久しぶりに拝見します。

どちらも月のような釉薬の跡があり、そこに因んで命銘されたようです。

今回一番心に残りましたのは、ご当代作の黒樂茶碗「橘花的皪」です。

全体は丸みを帯びていて、見込は黒釉、外側は黒釉とグレー釉が掛けられています。

黒釉の下に覗く白土の鮮やかさを愛で、白く浮き立つ橘の花を思い浮かべ蘇軾の漢詩から、橘花的皪」と命銘されたとのことです。

銘の元になりました蘇軾(蘇東坡)の漢詩は、「三月二十九日二首」で、「門外橘花猶的皪 (門の外に咲くみかんの花はなおあざやかに輝き)」とあります。

樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放

展覧会情報

名称
樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放
会場
樂美術館(京都市上京区)
会期
2015年3月7日~2015年8月2日
公式サイト
http://www.raku-yaki.or.jp/

樂吉左衞門 Modern 吉左衞門の茶陶(佐川美術館)

樂ご当代の茶道具

「樂吉左衞門 Modern 吉左衞門の茶陶」展 (佐川美術館)

佐川美術館にて「樂吉左衞門 Modern 吉左衞門の茶陶」展を拝見してきました。

吉左衞門Xとは異なり、樂ご当代単独の個展で、拝見する機会が少ない、花入・水指・火入・蓋置・建水・ぐい呑等が展示されていました。

入口には、焼貫茶入「青縞」、焼貫黒樂茶碗「入渓」、焼貫水指が並んでいました。
どれもモノトーンの縞模様で侘びた印象です。

最初の展示室では水指と建水を中心に展示されており、特に水指の蓋とのコンビネーションに惹かれました。

淡い印象の呉須刷毛目広口水指には、木地の割蓋が合っていました。

もう一つの焼貫広口水指にはヘギ黒漆に留め金オレンジの蓋がくっきりとした刷毛目に合っていました。

次の展示室は、花入、ぐい呑、火入、蓋置等が展示されていました。

フランスのルビニヤックで木片を叩いて制作したフランス焼貫花入は、存在感があります。

ぐい呑は「千代久」という名前で、赤樂・れき釉等が展示されており、ご当代のぐい呑は非常に珍しいと思います。(公式会場に展覧されたのは初めてでは)

また赤樂三角火入、れき釉伽藍石蓋置も展示されていました。

茶碗は、雨に因んだ「雨滴に洸あつめて」シリーズと「牛犂」「田牛」、「斗牛」、「祭牛」といった牛シリーズが展示されていました。

牛シリーズは、木片で叩いたような跡があり、フランス花入に似た雰囲気もありました。

今回、さまざまな種類に渡ったご当代の茶道具が拝見できる良い機会でした。

また樂歴代が数多く制作された向付や鉢といった懐石道具を、ご当代ならばどのようなデザインで作られるかぜひ拝見してみたいと思いました。

 

展覧会情報

名称
樂吉左衞門 Modern 吉左衞門の茶陶
会場
佐川美術館(滋賀県守山市)
会期
2015年4月3日~2015年10月4日
公式サイト
http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/

畠山即翁の大師会茶会(畠山記念館)

誇り高き初陣

畠山即翁の大師会茶会

畠山記念館にて、「畠山即翁の大師会茶会」を拝見してきました。

今回は、畠山即翁が大師会で昭和12年(1937年)に初めて茶席を担当した際の取り合わせを中心とした展示です。

大師会は、三井物産の創始者であり茶人である益田鈍翁が、明治28年(1895年)に弘法大師(空海)の書を入手した記念に翌年から始めた茶会で、光悦会と並んで現在まで続く二代茶会のひとつです。

即翁は、寄付で信長ゆかりの書状を掛けて茶会の趣向を暗示し、本席では信長・秀吉・利休を意識した取り合わせに遠州・不昧旧蔵の道具を加えています。

主な茶道具は次のとおりで、即翁の力の入れ様を感じます。

掛物は、寄付の紹翁書状と本席の南楚師説墨跡 送別語です。

茶碗は、信長が所持したことにより銘が付けられた井戸茶碗「信長」で、梅花皮(かいらぎ)がしっかりあり、堂々としています。

茶杓は利休作の「落曇」で、秀吉が曲げ直そうとして失敗して打ち破ろうとしたところ侍医が拝領したというエピソードがあります。

茶入は、瀬戸金華山窯で制作された滝浪手の本歌です。撫肩の肩衝で、釉薬が一筋流れていることから遠州が「滝浪」と銘々されました。遠州の箱に不昧の箱が添っています。

また今回は、大師会の発起人である益田鈍翁の茶道具も展示されました。

その中では、鈍翁好みの渡辺喜三郎作の太夫棗に惹かれました。

太夫とは松の異名で、沢庵和尚ゆかりの老松で作ったとあります。碁笥底の溜塗で非常に薄造りということです。

もう一つは、鈍翁が茶事で豆腐を切り分けるのに使ったとある同じ喜三郎作の豆腐茶箱で、鈍翁のユーモラスな茶事振りを思い浮かべました。

 

●展覧会情報

畠山即翁の大師会茶会 ―井戸茶碗信長の取り合せ― 【併設】益田鈍翁ゆかりの茶道具
畠山記念館(東京都港区)
2015年4月4日~2015年6月14日
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/index.html

いちわん in 三島 ~ 三嶋暦と三島茶碗

三嶋暦と三島茶碗

三島茶碗ゆかりの三島に行って参りました。

もちろん三島茶碗は、高麗(朝鮮半島)で作られ、その文様が三嶋暦のくずした文字に似ているということで呼ばれたもので、三島で作られたものではでないです。

現代版・三嶋暦

現代版・三嶋暦

●三嶋大社

三嶋大社は、創建の時期は不明ですが、古くより三島の地に鎮座し、奈良・平安時代古書にも記録が残る、大変歴史のある神社です。

お伺いした折りには、人出が多く、結婚式・宮参り・車のお祓い、さらに広い境内で太極拳の奉納演舞が行われ、地元の方々に親しまれていることが分かります。

三嶋大社

三嶋大社

●三嶋暦師の館

その三嶋大社の近くに「三嶋暦師の館」があります。

三嶋暦は、仮名文字で印刷された暦としては日本で一番古いものだと云われ、おおよそ鎌倉時代から明治に入った1883年まで販売されていました。

三嶋暦師の館は代々三嶋暦を製造販売をしてきたと伝えられています河合家の建物で、庭の一角に天文台があり、屋内には作業場を設けてあったとのことです。

三島市では、この歴史のある建物を河合家から寄贈されたのを機会に、2005年に整備し、三嶋暦の歴史・文化を親しめる場所として活用できるようにしました。

館内の説明は地元のボランティアの方が行ってくださいます。

展示は、暦の歴史、実際の三嶋暦、三嶋暦の作り方等で、三嶋暦が印刷できる体験コーナーもあります。

そしてその中に三島茶碗も展示されていました。

確かに三嶋暦と三島茶碗の文様は雰囲気が似ており、昔の人はよく名付けたものだと改めて感心しました。

三嶋暦師の館

三嶋暦師の館

●三島で作った三島茶碗

また三嶋大社の大鳥居近くの焼きもののお店では、「三島で作った三島茶碗」を掲げ、三島の陶芸家が作った三島茶碗を三島ブランドとして扱っていました。

 

三島茶碗文化振興会

三島茶碗文化振興会ホームページ

 

●関連サイト

三嶋大社
http://www.mishimataisha.or.jp/

三嶋暦
http://www.geocities.jp/mishimagoyomi/index.htm

三嶋暦師の館
http://www.geocities.jp/mishimagoyomi/yakata/yakata.htm

三島茶碗文化振興会
http://www3.tokai.or.jp/mishima-chawan/

陶器のすぎうら
http://www.sugiuratouki.com/mishimade/index.html

いちわん in 小田原 ~ 大茶人ゆかりの展示館

大茶人ゆかりの展示館

小田原にあります、近代の大茶人である益田孝(鈍翁)(1848-1938)と松永安左エ門(耳庵)(1875-1971)ゆかりの展示館に行って参りました。

 

◆鈍翁 in 西海子

鈍翁 in 西海子

鈍翁 in 西海子(どんのう いん さいかち)

鈍翁は、三井の大番頭として三井物産や日本経済新聞、三井鉱山等を興して三井の発展に寄与しました。

美術品の蒐集家でも知られ、源氏物語絵巻、紫式部日記絵巻、佐竹本三十六歌仙、十一面観音像といった現在国宝や重要文化財に指定されている作品を数々所蔵し、日本美術の海外流出阻止も行いました。

生前、コレクションで美術館を作ることも考えたようですが、相続と戦後のGHQによる高率の財産税により子孫の手を離れ、美術品の数々は畠山記念館、五島美術館、根津美術館等に収められています。

また茶人としても千利休以来の大茶人と云われ、茶事・茶会を数多く催し、原三溪、松永耳庵といった財界人をお茶に導きました。

鈍翁in西海子(さいかち)の館長の奥様の祖父母が鈍翁に仕え、祖父は執事として祖母は茶懐石の料理人として働き、その縁で鈍翁の広大な屋敷のあった掃雲臺の近くで、この展示館を平成13年に開館しました。

展示品は、祖父母が直接鈍翁から受領したものを始め、館長が蒐集しました、鈍翁ゆかりの掛軸、色紙、短冊、茶道具、書簡、写真等でなかなか他では拝見できないものが多いです。その努力に頭が下がります。

館長の鈍翁に対する思いは強く、情熱のこもった解説をしてくださり、その後、館内の茶室でお薄を一服いただきました。

◆松永耳庵記念館

松永耳庵記念館

松永耳庵記念館 老欅荘(ろうきょそう)

松永耳庵は、東邦電力を始め各地の電力会社を傘下に治め「電力王」と称されました。

戦後は電力事業再編にあたり、周囲の反対を押し切って進め、「電力の鬼」と非難を浴びましたが、安定した電力供給により日本の復興をもたらしました。

60歳を過ぎてから益田鈍翁に引き込まれてお茶の道に入り、有楽茶碗を破格の値で入手するなど短期間で頭角を現し、鈍翁・原三溪とともに近代三茶人に数えられました。

蒐集した茶道具を始めとする美術品は1948年に東博に寄付し、その後コレクションを再開して、1961年の国宝「釈迦金棺出現図」で完成しました。

コレクションは保存と一般公開のため、松永記念館を設立しました。

ところが耳庵没後に資金難・人手不足となり作品のほとんどを福岡市美術館に寄贈し、解散しました。

現在の松永記念館は、耳庵ゆかりの品はほとんどなく、隠居後に暮らした「老欅荘」が見学できます。

老欅荘は丘の上に建ち、周りに遮るものがなく、日当たりも風通しも良い家で、昔は小田原の海が見えたそうです。

館員に説明されて初めて気がつきましたが、広間の十畳は、畳の大きさがまちまちで、やかんでお茶を点てている耳庵の自由なお茶を思い出しました。

見学したお茶室は四畳半台目で、窓も躙り口も大きく、明るいお茶室でした。ここも風通しが良く、きっと耳庵はゆったりとお茶を楽しんだことでしょう。

耳庵の茶道具は、東博か福岡に行かなければ拝見できませんが、老欅荘で耳庵のお茶ぶりを感じることができます。

小田原には、鈍翁・耳庵と並ぶ、三越の社長を務めた茶人の野崎廣太(幻庵)(1859-1941)の別荘もあり、意外な茶どころということが分かりました。

 

●展覧会情報

春の鈍翁展
鈍翁in西海子(神奈川県小田原市)
2015年1月15日~2015年4月29日
http://www.post-ad.co.jp/donnou/

常設展
松永記念館(神奈川県小田原市)
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/facilities/matsunaga/

THE 琳派-極めつきの畠山コレクション-展

琳派の茶

THE 琳派
畠山記念館にて「THE 琳派」展を拝見して参りました。

最近の琳派ブームに加え、日曜美術館や新聞でも案内され、かなりの人出でした。

琳派といいますと、金銀の装飾や墨のたらし込みが浮かびまして、軸は別として茶席にあまり馴染まないのではと思っておりました。

ところが見事に茶道具が揃っており、順々に紹介致します。

まず最初は本阿弥光悦(1558-1637)作「赤楽茶碗 名 雪峯」です。

楽茶碗は侘びたもので琳派の華やかさとは違うのではと考えるところ、大きな火割れに稲妻のように大胆に金粉繕いが成されて、見事に琳派をしています。

さすがは琳派の先駆者の光悦です。

ダイナミックな「雪峯」を拝見していますと、対照的な静かな佇まいの「白楽茶碗 銘 不二山」を思い出しました。

こちらは雪を頂いた富士山を彷彿とさせる侘びた風情のお茶碗です。

旧姫路藩主・酒井忠正から「雪峯」と「不二山」の譲渡を申し出られた即翁は、「不二山の酒井家か酒井家の不二山か」というほどの縁を慮り、「雪峯」を選び譲り受けたということです。

もし「不二山」も譲り受けたならば、ここに二碗を揃って拝見できたかも知れないと想像しました。

次に圧倒されたのが、光悦書・俵屋宗達(生没年不詳)下絵という豪華な共作の「金銀泥薄下絵 古今集和歌巻」です。

金銀泥で描いた薄の料紙に光悦の流麗な書が冴え渡り、これぞ「琳派」と言える華やかな作品でしばし見とれてしまいました。

他には「琳派」の名前の元になった尾形光琳(1658-1716)とその弟である尾形乾山(1601-1682)の作品が並びます。

光琳は「共筒茶杓 銘 寿」、乾山は「色絵福寿文手鉢」や「銹絵染付絵替り四方向付」といった懐石道具が展示されていました。

両者は外側は文様や文字が描かれておりますが、内側は無地か大きな模様で、料理が映えそうです。

さらに気に留まりましたのは、光悦の孫の本阿弥光甫(1601-1682)です。

光甫は、琳派の華やかさから離れて信楽焼を用いて号の「空中」から名付けた「空中信楽」が有名です。

今回は、その信楽の「信楽砂金袋香合」や「信楽振出 銘 老茄子」、「共筒茶杓 歌銘 谷風」が出品されていました。

他にも乾山作「銹絵松図茶器」や「色絵菊文竹節蓋置」、乾山作・光琳絵「銹絵染付火入」といった茶道具に加えて、琳派の酒井抱一(1761-1829)や鈴木其一(1796-1858)の華やかな軸や屏風も拝見致しました。
 
 

●展覧会情報

開館50周年記念 THE 琳派
畠山記念館(東京都港区)
2015年1月17日~2015年3月15日
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/index.html