一番作りたかったものは
サントリー美術館にて「天才陶工 仁阿弥道八」展を拝見して来ました。
展覧会の解説に「人気はあるが展覧会としてまとまって公開されることはほとんどない」とありました。
確かに、道八の道具は、茶会でよく使われて有名で人気があり、展覧会では取り合わせの中で登場するのですが、初めての「道八展」です。
会場に入りまして、まず驚かされて微笑んでしまったのは、色絵狸炉蓋でした。
炉の火を温存するためのもので、炉の上にユーモラスな焼物の坐像を置くという、今では奇抜な発想です。
「道八」と名前を聞きますと、華やかな色絵の茶碗や懐石道具を思い浮かべてしまいます。
ところが今回、会場を回ってその考えが間違っていることがわかりました。
樂茶碗ののんこう写しから始まり、次のように続々と写しが続きます。
焼物総覧といった印象です。
樂茶碗利休七種、仁清、乾山、
青磁、白磁、染付、
祥瑞、伊羅保、オランダ、
交趾、蕎麦、三嶋、
御本立鶴、絵高麗 等
変わったところでは、ドイツの徳利写しもありました。
どれも見事な写しで、道八の技術力の高さをうかがい知ることができました。
焼物の産地は、中国、朝鮮、日本、東南アジア、ヨーロッパと各地に点在しており、どのように道八は本歌を入手したのかと興味は尽きないです。
作品を沢山拝見しているうちに、道八のイメージが京焼からさまざまに変化し、道八に、「一番作りたかったものは何ですか」と問いかけたくなりました。
道八は何と答えてくれるでしょう。
・・・ 狸の炉蓋かも知れません。
最後に所蔵者を見ますと、東博や京博、野村美術館、逸翁美術館、湯木美術館といった著名な美術館のみでなく、個人蔵や小ぶりな美術館、寺院とあり、幅広く道八の作品を集めました、サントリー美術館関係者のご苦労に感謝致します。
●展覧会情報
天才陶工 仁阿弥道八
サントリー美術館(東京都港区)
2014年12月20日~2015年3月1日
http://www.suntory.co.jp/sma/