いちわん

~ 楽在一碗中 ~
川喜田半泥子物語展(あべのハルカス美術館)

川喜田半泥子物語展(あべのハルカス美術館)

光悦の再来

あべのハルカス

あべのハルカス

あべのハルカス美術館にて「川喜田半泥子物語」展を拝見してきました。

あべのハルカス美術館は、大阪の天王寺駅に直結しているあべのハルカスビルの16階に位置し、都市型美術館を目指して、2014年に開館しました。

館内は広く、景色が良くて明るい美術館でした。

川喜田半泥子(1878-1963)は、江戸時代から続く木綿問屋の跡取りとして生まれ、百五銀行頭取を務めるなど実業家として活躍しながら、陶芸・写真・書画、俳句等に豊かな才能を発揮しました。

陶芸は本業でないにもかかわらず魅力的な作品を次々と作成し、自由闊達な作風からも本阿弥光悦の再来ではないかと思いました。

また半泥子は、自分の作品でお金を得たことがないと聞いたことがあり、偉大なるアマチュアを標榜していたようです。

展覧会は、半泥子の子ども時代に始まり、木綿問屋ののれんや半泥子を育てた祖母の教え、半泥子が撮った写真や描いた絵、それに半泥子が集めた茶道具も展示されていました。

半泥子が集めた茶道具は、利休作といわれる竹一重切花入「音曲(おんぎょく)」(利休が韮山の竹で作った三つの花入の一つ、他は「園城寺」「尺八」)や光悦作といわれる赤楽茶碗「松韻」がありました。

半泥子は光悦を最も高く評価しており、この「松韻」を入手した時は感激ひとしおだったということです。

そして圧巻の半泥子の作品たちです。

素晴らしい作品も多く、その中で特に心惹かれたものを紹介致します。

伊賀水指「慾袋」

五島美術館蔵の伊賀水指「破袋」を拝見して制作した写しの三つの内の一つで、その迫力は本歌に負けておらず、
青海波の金継ぎは本歌をしのぐ試みで、それだけでも半泥子の実力が分かります。

井戸手茶碗「渚」

韓国の土で作られた侘びた肌合いに、水色の釉薬が鮮やかなお茶碗です。

粉引茶碗「雪の曙」

展覧会ポスターに取り上げられるほどの素晴らしいお茶碗で、白い釉薬に薄水色が混ざり、雪の朝の風情です。
決して端正ではなく、口作りは切れ目があり、傾いていますが、心惹かれます。
光悦が作るのではないかと思えるお茶碗です。

志野茶碗「不動」

「雪の曙」に比べると整った造形の中に力強さを秘めたお茶碗です。

刷毛目茶碗「これはこれは」

晩年に近づくにつれて、半泥子は大侘び茶碗と呼ばれる陶芸の極北に至る茶碗を作るようになります。
大侘び茶碗の「これはこれは」は、もはやこれ以上侘びて進化すると、お茶碗の範疇を超えてしまうと感じました。

今回展示された半泥子の作品の多くは、三重県にある半泥子ゆかりの石水博物館に収められ、拝見できる機会があります。

また半泥子の窯は、廣永窯として現在も続いており、孫弟子の藤村州二氏が作陶しています。

・石水博物館 http://www.sekisui-museum.or.jp/
・廣永窯 http://hironaga.web.fc2.com/

川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-

川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-

展覧会情報

名称
川喜田半泥子物語 -その芸術的生涯-
会場
あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)
会期
2015年3月17日~2015年5月10日
公式サイト
http://www.aham.jp/

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