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住友春翠生誕150年記念特別展 バロン住友の美的生活―美の夢は終わらない 第2部「数寄者 住友春翠-和の美を愉しむ」 (泉屋博古館東京分館)

住友春翠生誕150年記念特別展 バロン住友の美的生活―美の夢は終わらない 第2部「数寄者 住友春翠-和の美を愉しむ」 (泉屋博古館東京分館)

お茶と邸宅

住友春翠生誕150年記念特別展 バロン住友の美的生活―美の夢は終わらない

泉屋博古館分館にて「バロン住友の美的生活 美の夢は終わらない 第2部 数寄者住友春翠-和の美を愉しむ」を拝見して参りました。

泉屋博古館は住友家が収集した美術品を保存・展示した美術館で、1960年に京都鹿ヶ谷に完成し、その後2002年に東京六本木に東京分館が開館しました。

今回は、住友家15代住友春翠の生誕150年を記念して開催された第2部で、1部が絵画中心、2部は茶道具等東洋美術と住友家の邸宅が取り上げられました。

住友春翠(1864-1926年)は公家である徳大寺家から住友家に入り、明治・大正時代に住友グループの基礎を築き、また晩年には数寄者として茶の湯を嗜み、茶会を度々催しました。

最初の展示は「茶臼山本邸の概要 -茶臼山でお茶を」というタイトルで、1903年に竣工した神戸須磨別邸と1915年に完成した大阪茶臼山本邸の様子が展示されていました。

どちらも広大な邸宅で、須磨別邸は洋館、茶臼山本邸は日本家屋が中心で模型や図面、写真でその様子が展示されていました。また住友家の家紋である三盛抱茗荷紋が入ったディナーセットが展示され、その豪華な食事風景が想像できました。

驚きましたのは邸宅を飾った絵画類で、伊藤若冲の「海棠目白図」が展示されており、先日展覧会があった動植綵絵と画風もサイズも似ており、素晴らしい作品でした。その他邸宅には、モネやメアリー・カセットといった絵画も飾られていたようです。

次は茶道具が中心の展示です。茶臼山の邸宅には、裏千家今日庵写しの好日庵、知足斎といった茶室があり、春翠により茶事・茶会が行われました。

今回は、住友家12代友親30年忌の追悼茶会や知足斎炉名残茶会等の取り合わせを中心にして展示されていました。

名品揃いで、特に心に残りました作品は次のとおりです。

・佐竹本三十六歌仙 源信明・・大正8年に巻物から軸へ表装し直され、それ以来所有者が変わらない数少ないものの一つです
・白鶴香合 仁清作 ・・鶴が首をのばした綺麗な香合で、永樂善五郎に写させて自身の還暦茶会の引き出物にしようと考えていました
・大講堂釜 ・・徳川三代将軍家光より前田利常に伝来した大名物で堂々とした茶釜です
・瀬戸肩衝茶入 銘 真如堂 ・・肩が柔らかい端正な茶入です
・小井戸茶碗 銘 六地蔵 ・・小堀遠州が伏見六地蔵で見出したものでカイラギのある寂びた茶碗です
・小井戸茶碗 銘 筑波山 ・・六地蔵とならぶ名品で六地蔵よりさらに侘びを感じる茶碗です
・伯庵茶碗 銘 宗節 ・・高橋箒庵から譲られた茶碗で春翠愛蔵の品とのことです
・茶杓 銘 長生殿 住友春翠作・・すーっとした繊細な茶杓で公家出身らしい優美さが感じられます
・色絵龍田川水指 仁清作 ・・きれいさびと言えるような優美な水指です

春翠は63歳で亡くなり、自身の還暦茶会を催すことはできませんでした。さらに長命であれば数寄者としてさらに活躍したのではと思います。
 

●展覧会情報

バロン住友の美的生活 美の夢は終わらない 第2部 数寄者住友春翠-和の美を愉しむ
泉屋博古館分館(東京都港区)
2016年6月4日~2016年8月5日
http://www.sen-oku.or.jp/

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