いちわん

~ 楽在一碗中 ~
展覧会

齋田記念館 茶の湯の心展

文人のコレクション

齋田記念館「茶の湯の心」

齋田記念館にて「茶の湯の心」展を拝見しました。

齋田記念館は、地元で名主を勤め、明治になりましてから本格的に製茶業を始めた齋田氏の自宅を改築したもので、今年で十五周年を迎えました。

所蔵品は、茶に関する書籍が多いことが特徴で、他にも代々の齋田家文人の書跡・典籍・絵画や茶道具・民具等があります。

展示会場は、蔵の一部屋で、ゆっくり見渡せる広さです。隣のご自宅は、塀で中を窺うことはできませんが、広大な庭園があるようで、紅葉をかいま見ることができました。

今回の展覧会は、早稲田大学會津八一記念館に所蔵されている「富岡重憲コレクション」から茶道具を中心に出品されています。

富岡重憲氏(1896-1979)は、日本の地熱開発事業の先駆者として活躍するかたわら、書道や茶道にも通じた文人でした。そのコレクションは、富岡美術館で20年以上公開されていましたが、美術館の閉館後、會津八一記念館に収められました。

コレクションは鑑賞陶磁と白隠などの近世禅書画が中心で、禅書画を手掛かりに禅の神髄に触れようとしていたようで、数寄者というよりも文人の趣が感じられました。

今回の展覧会で一番拝見したかったものは、珠光印のある達磨図で、昭和初期に「茶道全集」に記載されて以来77年ぶりの公開です。迫力のある筆法に見とれていました。

珠光というと茶人、侘び茶の創始者、と思いこんでいましたが、画人としての珠光の存在説もあることは今回の展示で初めて知ることができました。茶人珠光と画人珠光は同一人物か否かは江戸時代から結論が出ていない難問とのことです。

他に惹かれましたのは次の作品です。

蛤蜊観音図 白隠慧鶴筆
蛤蜊から現れた観音さまのユーモラスな絵に救われる思いがしました

竹茶杓 杉木普斎作
幅広、櫂先長く大胆な茶杓です。
普斎は、下削り師はなく、全て自分で削っていたと聞いたことがあり、普斎の勇壮さを感じます

黒楽茶碗 銘破れ窓 長次郎作
長次郎らしいかせた筒型のお茶碗で手にすっぽりと収まるようです。お茶を点てれば息を吹き返すような気がします

雨漏茶碗 銘荷葉
茶染みが美しい、銘(蓮の葉)のような清楚でしっとりしたお茶碗です

唐津分銅型香合
分銅は宝尽の文様にもあります吉祥の形で、青磁や織部が有名で、唐津は珍しいです。
梅が枝とぐりぐり文様が描かれた柔らかな印象を受けました。

 

齋田記念館は、週末に開館している日が少なく、なかなかチャンスがなかったですが、今回やっとお伺いすることができました。

また展示のパンフレットが素晴らしく、一般的に作品一覧のみ掲載している展覧会が多いですが、齋田記念館では全作品の写真と展示用の解説に加え、作者は箱書した宗匠といった関連した人の略歴まで掲載されていまして、通読すればかなり勉強することができます。
 

●開館十五周年記念特別展 茶の湯の心
~早稲田大学會津八一記念博物館「富岡重憲コレクション」から~
齋田記念館(東京都世田谷区)
2013年10月26日~2013年12月13日
http://saita-museum.jimdo.com/

齋田記念館

右側が斎田記念館の入り口

「卯花墻」と桃山の名陶展

桃山の陶器総覧

「卯花墻」と桃山の名陶 チラシ
三井記念美術館にて、「「卯花墻」と桃山の名陶」を拝見して参りました。

今回は、志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部といった桃山時代を代表する茶陶の展覧会で、これを拝見しますと、樂以外の桃山時代の陶器をざっと眺めることができます。樂焼は、次回展覧会「楽茶碗と新春の「松雪図」」までのお楽しみです。

注目は、先日の「不二山」(※)に続く国焼茶碗もう一つの国宝、志野茶碗 銘「卯花墻」です。こちらは不二山のようなどっしりとした品格ではなく、何とも言えない絶妙な「お茶」を感じます。

「お茶がある」という言葉を茶碗で表現しましたら、一つの形として卯花墻になると思います。

前回の井戸茶碗(※)のように、手にしてお茶をいただきたいと強く思いました。

それともう一つぜひ拝見したかった志野茶碗は「広沢」(湯木美術館蔵)です。

白にオレンジ色の焼き肌がとても綺麗で、見事な焼き具合です。間近で拝見すると意外とたっぷりしていることに気がつきました。

以下、展示分けに従いまして、気に留まりました作品を挙げます。

志野
志野は、先ほど挙げた卯花墻と広沢を代表とするお茶碗に加えて、香合と懐石道具も素敵でした。特に向付は志野草文向付、鼠志野花文向付とさまざまな模様の向付があり、お茶事で刺身を盛って折敷に四つ碗とともに置いた姿を想像していました。

黄瀬戸
水指、茶碗、香合があり、惹かれましたのは懐石道具の鉢で、黄瀬戸福字平鉢、黄瀬戸菊花形鉢等がよかったです。進肴が似合いそうです。

瀬戸黒
これはもう、迫力のお茶碗ということで、瀬戸黒茶碗 銘「大原女」が大きな存在感で展示されていました。お茶の緑が映えそうです。ただお茶を点てるには圧倒されてプレッシャーがかかる気がします。

織部
織部は、日本一の織部茶碗と聞いたことがある、織部菊文茶碗が素敵でした。黒の釉薬の掛分けと菊文のバランスが見事です。
それと一度は手にしてみたい織部切落手鉢がよかったです。手付きの手鉢で焼魚を盛って、茶事で使ってみたいです。

それから今回の展覧会を象徴するような、寄向付(よせむこう)が展示されていました。

通常向付は同じ種類ですが、これは次の五種類の向付を組み合わせたもので、しかもそれぞれが一級品という贅沢な向付です。

寄向付
志野飛鳥文向付
鼠志野飛鳥文向付
織部花筏文向付
黄瀬戸鉢
青楽割山椒向付 道入作

茶事の席中では、お客様同士が向付を交換して拝見しあうのが楽しみのひとつだとか。

それにしても、慶長年間(1596-1614)初頭から元和年間(1615-1623)頃のわずか20~30年の間に、これほどバラエティに富んだ焼物、しかも茶陶が生まれたことは奇跡的だと思います。

 

●特別展 国宝「卯花墻」と桃山の名陶 -志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部-
三井記念美術館(東京都中央区) 2013年9月10日~11月24日
http://www.mitsui-museum.jp/index.html

三井記念美術館

井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ展

大井戸、小井戸、青井戸

根津美術館 茶室「披錦斎」

根津美術館 茶室「披錦斎」

東京 根津美術館にて、「館蔵の井戸茶碗でたのしむ茶席」と「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」展に行って参りました。

「館蔵の井戸茶碗でたのしむ茶席」は、「井戸茶碗」展に合わせて、根津美術館のお茶室にて美術館所蔵の井戸茶碗でお茶をいただく企画で、所蔵品でお茶会を開催するのは初めてとのことです。

当日は天気もよく、お茶室の披錦斎の名前のとおり、紅葉が美しき錦のような庭園を歩き、お茶室に向かいました。

美術館のお茶会ですと、薄茶席が多く、道具の取り合わせも親しみやすい場合が多いのですが、今回は井戸茶碗で濃茶ということで、居住まいを正すような道具組でした。

床: 石室善玖墨蹟 寒山詩
花入: 古銅六角
花: 白玉椿
釜: 芦屋桐文
水指: 南蛮縄簾
茶入: 名物 唐物丸壺 銘 青山 徳川秀忠所持
袋: 雲鶴緞子 間道織留
茶碗:
  青井戸茶碗 銘 滝川
  青井戸茶碗 銘 鳴戸
  青井戸茶碗 銘 鶴
  小井戸茶碗 銘 芝山
  小井戸茶碗 銘 秋の山
茶杓: 織田貞置作

床、花入、釜、水指とも濃茶席にふさわしく格が高いものでした。

驚いたのは、茶入「青山」で、根津美術館の創立者である根津青山が自分の名に因んで入手したといういきさつがあり、美術館のある意味代表のような茶入で、お点前に使ってくださるとは予想していませんでした。

茶碗はどの井戸茶碗も長い間大事に伝わってきたということがよく分かり茶染も継ぎも愛でたいお茶碗でした。

そして濃茶の美しさ・・緑がとてもよく映えており、お茶碗はお茶をいただくことこそ本当の姿だということがよく分かりました。
 
 

お茶席の感激のまま美術館の展示室に向かい、「井戸茶碗」展を拝見しました。

そこは右を向いても左を向いても井戸茶碗で、大井戸、小井戸、青井戸に分類して展示していました。

そのほとんどが、口開き、轆轤目、見込みの目跡、竹節状の高台、高台まわりの梅花皮(かいらぎ)、高台の中の兜巾、総釉といった井戸茶碗の特徴を備えています。

ではお互いそっくりかというとそうではなく、それぞれ個性を持ったお茶碗で、自然と自分の好みのお茶碗を見つけることができます。

その中で心に強く印象つけられたのは次の三碗です。

大井戸茶碗 銘 喜左衛門
・・本当に堂々としたお茶碗で、大井戸の中でも頭抜けていると思います
大井戸茶碗 銘 有楽
・・井戸茶碗の中では落ち着いた佇まいで、惹かれました
青井戸茶碗 銘 柴田
・・茶染みもほとんどなく、美しいお茶碗です

もしどれかいちわんを手元に・・ということでしたら、喜左衛門や有楽は格が高すぎて道具組みも点前も困りそうで・・柴田で自分のお茶事をしてみたいと想像していました。

図録には、武者小路千家の千宗屋若宗匠は、過去の所持者を挙げ、これほど多くの茶人に愛された茶碗は井戸茶碗だけだと執筆されています。

そこには武野紹鴎に始まり、利休、信長、秀吉、家康、織部、三斎、有楽、少庵、宗旦、遠州、光悦、不昧、宗雅といった戦国武将や大名茶人や、藤田香雪、益田鈍翁、原三溪、根津嘉一郎、松永耳庵、畠山即翁、湯木貞一ら近代の数寄者が名を連ねています。

樂茶碗は茶の湯の茶碗として生まれていますが、流派によっては茶事・茶会であまり使われない場合があり、より多くの茶人に選ばれるということでは井戸茶碗に軍配が上がるように思えます。

井戸茶碗を体感し、堪能できたお茶会と展覧会でした。

井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ

●井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ
根津美術館(東京都港区) 2013年11月2日~2013年12月15日
http://www.nezu-muse.or.jp/

菊池寛実記念智美術館 現代の名碗展

名碗が目の前に

智美術館

菊池寛実記念智美術館にて「現代の名碗」展を拝見して参りました。

まず驚いたのは、ほとんどのお茶碗がガラスケースに入っておらず、見込みも覗けるほどそばに寄れることです。

一般的な展覧会では、ガラス越しなので、見込みや口作りをじっくり拝見するのは難しいですが、今回は茶碗の内側をのぞき込むことができました。

なかなかできないことと、智美術館の今回の英断に感激しました。

拝見できますのは、

川喜田半泥子氏(1878-1963)、
加藤唐九郎氏(1898-1985)、
荒川豊蔵氏(1894-1985)、
三輪壽雪氏(1910-2012)といった近代の陶芸家から、

鈴木藏氏(1934-)、
田中佐次郎氏(1937-)、
樂吉左衞門氏(1949-)、
隠崎隆一氏(1950-)といった最前線で活躍している方、

加藤高宏氏(1972-)、
桑田卓郎氏(1981-)という若手の方々

と、およそ40名の幅広い作家のお茶碗です。

・・・

会場をぐるりと廻りますと近現代のお茶碗の流れが間近で一望できます。

紹介したい茶碗が数多く、とても書ききれないため心に留まった主なお茶碗を案内致します。

まず紹介したいのは川喜田半泥子氏のお茶碗です。

川喜田氏のお茶碗は、「ヤシノミ」、「さみだれ」と整った造形ではないですが、心惹かれる味があり、さらにお茶があり、手にとってお茶をいただいてみたくなります。

「近代の光悦」と言われて納得致します。

加藤唐九郎氏の志野茶碗は何回か拝見したことがありますが、やはり素敵です。

先年亡くなった辻清明氏の信楽窯変茶碗は荒々しい肌に、田中佐次郎氏の青宵茶碗、極光茶碗はその破格の居住まいに惹かれます。

当代の樂吉左衞門氏は、焼貫樂茶碗「望舒」、焼貫黒茶碗「一犂雨」、赤樂茶碗「柵塞辺の道ゆ」の三碗でどれもタイプが違って魅力的です。

桑田卓郎氏の白金彩点滴茶碗は、きらきら輝いており、最初これはちょっとと思ったところ、だんだんこういうお茶碗もよいかもと思うようになりました。

・・・

紹介しましたのはほんの一部で、本当に沢山のお茶碗を拝見できます。その中で自分の好みのいちわんを見つけられると思います。お勧め致します。

 

展覧会情報

現代の名碗

名称
現代の名碗
会場
菊池寛実記念智美術館(東京都港区)
会期
2013年9月14日~2014年1月5日
公式サイト
http://www.musee-tomo.or.jp/

名物裂を探る―織り込まれた歴史と美展

光悦の品格

サンリツ服部美術館

諏訪湖の畔にあるサンリツ服部美術館

長野県上諏訪のサンリツ服部美術館にて「名物裂を探るー織り込まれた歴史と美」を拝見して参りました。

サンリツ服部美術館は、元セイコーインスツルメンツ・セイコーエプソン社長の故服部一郎氏(1932~1987)が蒐集した美術品を展示するため、服部氏が愛した諏訪の地に1995年に開館されました。
茶道具の名品と近現代の西洋絵画がコレクションの中心です。

今回は主たる展示は名物裂ではありますが、特別出品されている本阿弥光悦(1558~1637)作白楽茶碗「不二山」に目を奪われました。

不二山は、国宝に指定された国焼茶碗の二つのうち一つ(もう一つは志野茶碗「卯花墻」)で、そのステータスを知らなくても圧倒的な存在感があります。

先日、五島美術館の光悦展(※)で多くの光悦のお茶碗を拝見しまして、そのどれとも異なる「品格」を感じます。

もちろん乙御前も雨雲もどれも素敵で洒落ていますが、不二山は格の高さを持っています。茶事でいえば、不二山で凛とした濃茶をいただき、肩の力を抜いて乙御前でお薄をいただくイメージです。

不二山は他の美術館での拝見は叶わないようで、この機会にぜひご覧くださるようお勧め致します。不二山を拝見するためにサンリツ服部美術館に訪れる価値は十分あります。

不二山は、現在畠山記念館にあります光悦作赤楽茶碗「雪峯」とともに姫路藩主酒井家から売り立てがあり、畠山即翁氏(1881~1971)がどちらか選べるチャンスがあったとのことです。その時即翁氏は、「不二山の酒井家か酒井家の不二山か」というほどの縁を慮り、雪峯を選び譲り受けることにしました。

即翁の茶人の心が窺えるエピソードで、もしかしたら畠山記念館で不二山を拝見できたかも知れません。

本展「名物裂を探る」は、裂を次の五つに分類して、主にその裂を仕覆としたお茶入と合わせて展示していました。

1.印金・金襴
2.緞子
3.間道
4.錦・モール
5.更紗

茶入の筆頭は、唐物茄子茶入「紹鴎茄子」で、大名物の貫禄で金襴二つ緞子二つの仕覆が添っています。

それと他の美術館ではあまり見られない展示方法として、キャプションとともに次のようなキャッチフレーズが書かれていました。なるほどと思うものやそのまま・・というものもあり、学芸員の方の工夫が偲ばれました。

「まるで霞のように」 (高野切第一種 伝紀貫之筆)
「アーチの中にいる龍」 (瓦燈龍金襴)
「三角形のリズム」 (針屋金襴)
「よろける縞の間道」 (日野間道)

サンリツ服部美術館は、都心になく、交通は少々不便でありますが、その分ゆっくりと拝見でき、作品も充実しており重ねてお勧め致します。

また、「不二山」が他での拝見は叶わないということで、究極の光悦展は、ここサンリツ服部美術館で開催されることを願いいつつ、諏訪湖を後にしました。

※五島美術館「光悦-桃山の古典(クラシック)」のレビュー記事はこちら

諏訪湖

諏訪湖

 

展覧会情報

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名称
名物裂を探る 織り込まれた歴史と美 ~特別出品 本阿弥光悦作 国宝 白楽茶碗 銘 不二山
会場
サンリツ服部美術館(長野県諏訪市)
会期
2013年9月28日~2013年12月20日
公式サイト
http://www.sunritz-hattori-museum.or.jp/

光悦-桃山の古典(クラシック)展

光悦に囲まれて

五島美術館

五島美術館にて「光悦-桃山の古典(クラシック)」を拝見してきました。

今展覧会は、本阿弥光悦(1558~1637)の事績(作品)を「書跡」、「陶芸」、「漆芸」、「出版」に分けて展示しており、これほど光悦の作品が一堂に揃うことは珍しいことと思います。

会場に入りますと、正面に名古屋の数寄者森山勘一郎(1887~1980)が弱冠十六歳で手に入れた黒茶椀「時雨」が迎えてくれ、会場の両脇には光悦の書がずらりと並びます。

書は華やかな和歌色紙・巻と侘びた消息(手紙)が対照的です。

和歌色紙・巻は、金銀墨絵のきらびやかな下絵に、流麗な書で和歌を書き付けていて、書の美しさ、紙の空間とのバランスが見事で、一幅の美術品と言えます。

また書は流麗に加えて、のびのびと書かれており、書を楽しんでいる光悦の姿が想像できます。

消息は、流麗さではなく、知人や友人に思いを伝えようとしている素朴な印象です。特に吉左衛門(樂二代常慶(~1635))への「茶碗四つ分の土を持ってくるように」という手紙が印象に残り、光悦と樂家の親密な関係が窺えました。

書ともう一つの見所は、光悦の茶碗です。黒、赤、飴釉、白・・と二十碗が展示されていました。

主なお茶碗を挙げました。

黒楽茶碗「時雨」、「雨雲」、「村雲」、「七里」
赤楽茶碗「乙御前」、「雪峯」
飴釉楽茶碗「立峯」
白楽茶碗「冠雪」
膳所光悦茶碗

この中で、個人的にNo1と思いますのは、赤楽茶碗「乙御前」です。何度拝見してもそのキュートさに魅了されます。手にして薄茶一服いただきたくなります。

もちろん他のお茶碗も素敵で、「雨雲」の切れ味のよさ、「雪峯」の迫力にも惹かれます。

そして今回初めて拝見したのが、膳所光悦茶碗です。これは小堀遠州(1579~1636)が品川御殿に三代将軍徳川家光の御成の時に、遠州が光悦に頼んで二つ作らせた茶碗です。

以前、遠州流家元の記事で写真が掲載されていまして、拝見したいと思っていまして今回叶いました。枇杷色で細かい貫入が全体に入っていました。

二つは似たお茶碗かと想像していたところ、もう一つは白土と黒の釉薬が掛かっており、形はよく似ているものの、受ける印象はだいぶ違っていまして驚きました。

光悦の作品を、一挙に拝見できる絶好のチャンスで、お勧め致します。

 

展覧会情報

名称
光悦-桃山の古典(クラシック)-
会場
五島美術館(東京都世田谷区)
会期
2013年10月26日~2013年12月1日
公式サイト
http://www.gotoh-museum.or.jp/index.html

涼をもとめて-畠山即翁の朝茶事-展

趣向でクールに

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畠山記念館

畠山記念館にて「涼をもとめて -畠山即翁の朝茶事-」展を拝見しました。

畠山記念館は、荏原製作所の創立者である畠山即翁(一清)氏(明治14(1881)~昭和46(1971))の茶道具を中心とした美術品を収集した美術館です。

所蔵品は唐物茶入や光悦のお茶碗を始め名品揃いで、さらに即翁氏は茶事を頻繁に行ったとのことで懐石道具も多いのが特徴です。また館内には茶室が幾つもあり、現在も茶会が行われており、まさにお茶の美術館です。

今回は、昭和13年(1938)に即翁氏が上野不忍池弁天堂で行いました朝茶事の道具を、茶会記をもとにできるだけ再現した展示です。しかも道具だけでなく、懐石の写真が添えてあり一層興味を増していました。

また即翁氏もその一人でした近代の数寄者由来の道具も展示していました。

お茶では、冷たい懐石といった直接的な涼しさだけでなく、道具やその使い方といった趣向で涼しさを表現します。

今回の展示ですと

 滝図掛物
 錠花入 仁清作
 唐物瓢形籠花入
 信楽水指 銘 玉兎
 ととや茶碗 銘 隼
 砂張青海盆
 高取透鉢
 黒掻合せ椀

といった品々です。

籠花入の竹の編んだ姿や掻合せの木目に涼しさを感じます。信楽やととやといった無釉や砂張の硬い感じが夏に向いています。水を打つとさらに涼しさを感じます。

錠花入も無釉の焼締めで朝顔が入れてあり、早朝にぴったりでした。

向付は仁清の白釉で、広口の蓋を逆さにしてさらに白髪豆腐を入れた写真が添えてあり、道具使い方と懐石の見事さに朝茶事の席に入った自分を想像していました。

今回の展覧会は、主道具、炭道具、懐石道具といった朝茶事の道具組を実際に拝見する良い機会ですので、お勧め致します。

後半は、即翁氏や朝茶事に参加した、松永耳翁氏や藤原銀次郎氏に加えて、同時代の数寄者の益田鈍翁氏や森川如春氏、原三溪氏の書といった縁の道具が展示されていました。

今回の展示期間は、当時の朝茶事にも出しました、金沢「吉はし」の蓮羊羹をお抹茶といただけるのですが、人気があって残念ながら品切れでした。

ご興味のある方は美術館のホームページで日程を調べていただき、朝一番の訪問をお勧めします。

正門から本館へ。緑の木々が暑さを和らげてくれる。

正門から本館へ。緑の木々が暑さを和らげてくれる。

展覧会情報

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名称
平成二十五年 夏季展 涼をもとめて -畠山即翁の朝茶事-
会場
畠山記念館(東京都港区)
会期
2013年8月3日~2013年9月16日
公式サイト
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/index.html

東京国立博物館常設展 日本美術の流れ:茶の美術

東博の仮想茶会

東京国立博物館の常設展である「日本美術の流れ」の「茶の美術」を拝見してきました。

当初は東博の「応挙館」にて月に一回開催されますお茶会に参加する予定でしたが、満席で入れず、常設展に参りました。

「応挙館」は、愛知県の明眼院の書院でしたが、益田鈍翁氏が品川御殿山へ移築しました。その時に佐竹本三十六歌仙を分割して、数寄者の手に渡ったというエピソードがあり、その後東博へ寄贈されました。機会があれば訪れたい建物です。

今回訪れたのは「日本美術の流れ」という常設展で、縄文時代の土偶から江戸時代の浮世絵まで、国宝・重要文化財など第一級の美術品が展示されており、一回りすることにより日本美術一万年の歴史を拝見することができます。

その中の一室として「茶の美術」があり、何点かを数ヶ月おきに展示替えしています。

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東博に茶道具はあまり縁がないような気がしますが、近代の代表的な数寄者の松永耳庵氏や、今回多く展示されていました日本橋の古美術商壺中居の広田松繁氏といった方々に寄贈されたコレクションを保持しており、充実しています。

現在展示中の「茶の美術」は、横物の軸「西江水」に始まり、八角面取釜、古染付手桶形水指、杉木普斎の茶杓「亀」、一入の黒樂「かのこ斑」・・とあたかも東博の仮想茶会に参加したようで楽しく拝見しました。

展示品の中で、特に心惹かれましたのは次の二点でした。

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彫三島茶碗 銘「木村」

外に花文がある珍しい「外花手」とよばれる綺麗な三島茶碗で、たっぷりとした薄茶をいただきたくなりました。

南京赤絵蓮鷺文手桶形茶器

絵が緻密で素敵な替茶器で、持ち手の端に描かれている顔が印象的でした。大阪鴻池家伝来で、元々は向付として作られた五客一組でした。

通常展は混雑しておらず、ゆったりと拝見できますので、上野に行かれたときにふらりと立ち寄るのにもお勧め致します。

 

※掲載した写真は「写真撮影可」の展示品です。

 

展覧会情報

名称
日本美術の流れ「茶の美術」
会場
東京国立博物館(東京都台東区)
会期
2013年5月21日~2013年8月18日
公式サイト
http://www.tnm.jp/

幸之助と伝統工芸展

素直な心でお茶を

パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアムに「幸之助と伝統工芸」を見に行って来ました。

「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助氏(明治27(1894)~昭和59(1984))は、あまり知られていないですが裏千家で茶道を学び、京都に真々庵という数寄屋住宅を持ち、流儀の発展に貢献した門人に与えられる老分を務めるほど茶道に取り組んでいました。

実業家の数寄者として活躍した荏原製作所の畠山即翁氏、阪急電鉄の小林逸翁氏、東急電鉄の五島慶太氏、東武鉄道の根津青山氏らは、収集した茶道具や美術品を保存する美術館を建てて公開していますが、松下幸之助のコレクションが公開されたことは(知る範囲では)なく、窺い知ることはできませんでした。

それが今回、パナソニック汐留ミュージアムの開館10周年記念として展示されることになり、どのような名品を拝見できるかと興味津々でした。

会場に入ると幸之助氏の茶道に対する次のような思いを本人の語りで聞くことができます。

「お茶をやる人は、本当は素直な心にならんといかんわけです。(中略)勝ってやろうかと負けようとかそんなことにとらわれず、それを超越した道が分かるわけですね。それがお茶の一服の価値じゃないかと思うんですよ。」

幸之助氏はこの「素直な心」を生涯大切にし、その「素直な心」を育む道として茶道に興味を持ったようです。

展示してある茶道具を一つづつ拝見して行きました。

幸之助氏が日頃にお茶を楽しんだ樂一入の黒茶碗「閑談」、樂宗入の黒茶碗「毛衣」や古九谷丸紋花鳥絵台鉢と古美術品は数点で、他は千家十職の先代の茶碗、北大路魯山人の平鉢、金重陶陽の花入といったようにほとんどが現代の作家の手になるもので、意外な感じでした。

さらに進むと茶道具でなく、着物、人形、飾棚とさまざまな工芸品が展示されていました。

ところが会場に幸之助氏の次の言葉があり、なるほどと思いました。

「名工の作という工芸品のようなものを作らんといかん。松下電器はね、大量生産だけど。」

幸之助氏は茶道具に触れるうち、現代の工芸家と接点を持ち、自社のものづくりと重ね合わせ、「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」との確信から、工芸家を支援する思いもあってコレクションを始めたようです。

また、幸之助氏は古美術の茶道具に興味がないということではなく、淡々斎十七回忌や坐忘斎の若宗匠格式宣誓式といった裏千家の茶会では、千利休の茶杓、中興名物の茶入、井戸茶碗といった名品を使いました。

今回、松下幸之助のコレクションを拝見できたのは良かったです。あと幸之助氏がどのようなお茶会をされたかそのイメージを掴みたかったです。

 

展覧会情報

幸之助と伝統工芸展

名称
開館10周年特別展「幸之助と伝統工芸」展
会場
パナソニック汐留ミュージアム(東京都港区)
会期
2013年4月13日~2013年8月25日
公式サイト
http://panasonic.co.jp/es/museum/

谷庄「茶入」展

手に触れる美術館

案内状

案内状

銀座の古美術店、谷庄で開催されています「茶入」展を拝見して来ました。

谷庄は、金沢の老舗の主に茶道具を扱う古美術店で、本店とは別に銀座に東京店があります。

東京店では年に数回展覧会を行い、夏は毎年一つのテーマのもとに茶道具が集まります。今までは、茶杓、炭道具、懐石道具・・と行われてきました。道具商の方から詳しい説明を聞くことができ、手に触れることもできまして、毎年楽しみにしています。

今回は茶道具のメインの一つである茶入の展覧会です。
展示は、茶入を一つ置くのではなく、仕覆や箱書といった次第も添え、茶碗や茶杓を添えているものがあり、次第の楽しみも味わえ、茶席の様子も思い浮かべることができるように工夫されています。

茶入は案内状にあるようなオーソドックスな古瀬戸の肩衝から次のようにバラエティに富んだ品揃えでした。

[形] 肩衝、広口、鮟鱇、丸壺 等
[窯分] 古瀬戸、金華山、瀬戸、島物、国焼(織部、備前、高取) 等
[手] 落穂手、飛鳥川手 等

今回、たまたま根津美術館の学芸員の方が、仕覆の裂地の説明をされるイベントに巡り会いました。

金襴、緞子、間道、錦、紹巴、風通・・と実際に茶入に添っている仕覆を拝見しながら、貴重な話をお聞きし、楽しく勉強することができました。

特に印象的でしたのは、かささぎと梅の文様の「清水裂」で、中国語で「かささぎと梅」の発音がおめでたい言葉を表し、吉祥文になったということで、古の茶人のセンスの良さに感心しました。

帰ってから清水裂を茶道辞典で調べたところ「濃紺の繻子地に梅花を白、枝を黄茶で出し小禽を配する」とあり、中国語の話題は掲載されておらず、専門家の知識の深さを再認識しました。

茶道具店といいますと敷居が高く感じますが、このような展覧会ですとお店に入りやすく、話もききやすいので、お勧め致します。

また、タイミングが合えば、美味しい金沢のお菓子とお抹茶をいただけて、落ち着いた時間を過ごすこともでき、併せてお勧め致します。

 

展覧会情報

名称
「茶入」展
会場
谷庄 東京店(東京都中央区)
会期
2013年6月28日~2013年7月6日
サイト
http://www.art-index.net/tanishotokyo.html